元ヤクルト鎌田祐哉が不動産業で積み上げてきた信頼と実績。1年後輩の石川雅規の活躍には「刺激をもらってます」 (4ページ目)

  • チャッピー加藤●文 text by Chappy Kato
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

恩師のアプローチ術も参考に

 その際に参考になったのが、現役時代に出会った指導者のアプローチ術だという。なかでも役立っているのが、早大の先輩でもある八木沢荘六氏の指導法だ。NPB7球団で投手コーチを歴任、ロッテでは監督にも就任した八木沢氏は、2008年から3年間、ヤクルトで投手コーチを務めた。

「八木沢さんは、喩えにゴルフの言葉を使ったりもするんですが、とにかく会話の引き出しが多いんです。指導する時も、指摘はするけど注意はしない。結果に対してただ怒るコーチが多かったですけど、八木沢さんはまず『こうしてみたらどう?』という提案をしてくれる。だから前向きになれるんです」

 野球の指導と不動産の営業はまったく関係がないように見えるが、人への接し方という点では相通じるところがある。人生、どんな経験も無駄にはならないという好例だ。

「八木沢さんの選手への接し方は、今でも接客の参考にさせてもらってます。すごく勉強になりますね」

 顧客からの信頼を得る上でもうひとつ、鎌田が大事にしているのが「家を売ったあとも、最後まで面倒を見る」というポリシーである。

「先日も、8年ぐらい前に家を買ってくれた奥さんから電話があって、『火災報知器鳴っちゃったんですけど、どうしたらいいですか』って(笑)。でも、そうやってずっと頼ってもらえるのは嬉しいですよね。『確定申告って、どうやってやるんですか?』という相談もありますよ」

 練馬区で家を売って9年。今では担当エリアを歩くと、あちこちで声を掛けられるようになった。家を買ってくれたお客さんは家族のようなものだという。練馬区じゅうにファミリーがいる......素敵な話だ。

 ところで、鎌田が野球をすることはもうないのだろうか? 聞いてみると、ときどき会社の草野球チームに"助っ人"として参加することがあるそうだ。

「行くとやっぱり『投げて』って言われるんですよ。何年か前に、神宮球場を借りて試合をやったんですけど、久々に神宮のマウンドに立ったらアドレナリンが出ましたね。肩は痛かったんですけど(笑)」

 それでも周囲が「おおー!」とどよめくぐらいのボールは投げられるそうだ。やはり元プロはモノが違う。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る