無名校出身のドラフト最下位指名投手が手にした1800万円の重み。楽天・西口直人の「下剋上物語」 (4ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Kyodo News

「ピュッて曲げなくてもいいんだって。キレがなくても大きく変化させられれば、右の外国人選手とかだったらゾーンが広いんで手を出してくれたり。そのスライダーを見せることによって、高めの真っすぐで詰まらせることとかもできると思うんで。柳さんと話をして、そういうイメージができました」

 金子からチェンジアップを学び、福井からはフォークのヒントを授かり、柳からはスライダーの活用法を伝授された。熟練のピッチャーから手ほどきを受けることで、西口は日々、アップデートを繰り返している。

 先発に転向した今シーズン、目標に掲げるのは「100イニング以上」。ブレイクを期待された6年目の25歳はしかし、「まだまだ」と謙遜するように、今の立ち位置を自覚する。

「先発として結果を残して、また期待してもらえるようなピッチングができたら、少しは『ブレイクしたんかな?』って思えるんじゃないですかね」

 100イニングへの旅。1イニング、1イニング、先発として歩みを刻めば、勝ち星にも恵まれるだろう。そうすれば、入団直後に抱いた野望である2ケタ勝利だって不可能ではない。

 下剋上は始まったばかり。王道を歩んできたタレントたちに負けじと、西口直人はマウンドで能力を解放する。

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