2022.02.27

無名校出身のドラフト最下位指名投手が手にした1800万円の重み。楽天・西口直人の「下剋上物語」

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Kyodo News

 その金額に一瞬、思考が停止した。

 昨シーズン、おもに中継ぎとして33試合に登板し、プロ初勝利を含む5勝とキャリアハイの数字を残した。契約更改交渉の場で前年の3倍以上もの年俸1800万円(推定)を提示された楽天の西口直人は、気持ちを奮い立たせた。

昨シーズン、キャリアハイとなる5勝をマークした楽天・西口直人昨シーズン、キャリアハイとなる5勝をマークした楽天・西口直人 この記事に関連する写真を見る  プロ野球選手には夢がある──そう、あらためて認識できたからである。

「自分が想像していたよりすごく多い金額をいただけたんで、『(2022年は)頑張らないとな』と思いました。入団した時は一番下でしたけど、野球を引退する時は同級生や同期のメンバーで一番お金を稼ぐことが自分の目標でもあるんで。ここから活躍して、どんどん年俸を上げたいっていうところも、モチベーションのひとつではあります」

無名校出身のドラフト最下位

 西口と同じ1996~97年生まれの学年は、アマチュア時代から名を馳せ、プロでも着実に実績を重ねる選手が多い「豊作の世代」だ。

 高校時代、現在チームメイトの安樂智大が済美の2年生エースとしてセンバツ準優勝の原動力となり、夏は前橋育英の高橋光成(西武)が2年生ながら優勝投手となった。ほかにも、栗原陵矢(ソフトバンク)、岡本和真(巨人)ら猛者たちが甲子園で躍動する姿を、「すごいな」と羨望の眼差しで見ていた。

 まるで別次元の住人のように彼らを見てしまうのも無理はない。なにしろ、西口は山本高校(大阪)という無名の公立校出身であり、3年生の夏は初戦でコールド負けと結果も出していなかった。

 高校を卒業後は、建山義紀(元日本ハムほか)や藤本敦士(元阪神ほか)を輩出した甲賀健康医療専門学校(現・ルネス紅葉スポーツ柔整専門学校)で、野球を基礎から学び直したことでパフォーマンスが向上。プロのスカウトの目に留まるようになり、2016年のドラフトで楽天から指名されたが、12球団の支配下選手で最下位の10位だった。

 ここがいわば、プロでの西口の原点である。

「一番下だったんで、あとはもう『それ以上は落ちることはない』って常に上を見ながらやっています。高校時代とかは、まさか安樂と一緒のチームで野球をやるなんて思ってもいなかったんですけど、今は『負けたくない』って気持ちはあります」