ドラフト1位が30歳で戦力外。片山博視が諦めずに語っていたこと (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 今後については「どうするかを考えながら、練習は続けていきます」と語るにとどめたが、現役続行の意志は揺るぎない。

 トミー・ジョンを受けた投手は、手術前に比べて球が速くなるということが定説になりつつある。そこに野手を経験したことで打者心理もわかるようになった。さらに、リハビリを兼ねてバッティング投手を務めていると、リリースが安定し、ボールのばらつきもなくなった。あとは左ヒジのコンディションの不安が消え、真っすぐがどこまで上がってくるか。

「ピッチャーとして今日この場に立てたことで、またこういう世界に帰ってくるチャンスもあると思う。まだまだあきらめる歳でもないですし、(リハビリ、トレーニングを)続けていけばもっとよくなる感覚もあります」

 30歳の手術経験者。片山の言う「こういう世界」がNPBを指していたのだとすれば、現実は限りなく厳しいと言わざるを得ない。しかし、「あきらめる歳でもない」とふっ切れた表情で語るその姿からは、そうした悲壮感はまったく感じられなかった。そもそも今年3月、手術に踏み切ったのは、再びマウンドに戻り、その先を思い描いていたからにほかならない。

 ひと冬越え、片山がどんなボールを投げるのか。"淡路の怪物"の覚醒を心から願っている。

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