恩師が語る、岩貞祐太が「トラの奪三振王」に急成長したわけ (4ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「今年、三振がたくさん取れているのも、試合をしっかり作れているのも、『この場面でいちばん必要なものは何か?』を自分でわかるようになったからでしょう。ランナーを許した。さあ、ピンチだ! これが以前のアイツだった。でも今年は違う。ヒットでランナーを許したが、飛んだところがラッキーなだけのヒット。芯で捉えられたヒットじゃない。そういう区別ができるようになった」

<頑張れじゃない。踏ん張れ!>

 これも佐々木監督が今年の岩貞に贈った言葉だ。

“踏ん張れ”は「相撲道」の言葉。前に突っ込むだけが勝負じゃない。場合によっては、いったん後ろに下がっても、土俵を割らなきゃ負けじゃない。徳俵(とくだわら)を使っても、最後に勝てばそれでいい。

「どんなきっかけでアイツが目を覚ましたのか知らないけど……」

 そう言いながら、じつは思い当たることがあるようだ。

「所帯を持つと決めたことを“理由”にしちゃえば、それがいちばん辻褄(つじつま)が合うんだけど……」

 昨年の12月、岩貞は学生当時から愛を温めていた女性との結婚を発表した。

「『変わらなきゃいけないんだ!』って心底思うときって、あるじゃないですか。昨年と今年の間のどこかで、アイツの“フン詰まり”が一気に抜けた。抜いたのは、アイツの勇気なんだと思う。口だけの決意表明ならアイツは何度もやってきたけど、自分の行動で、誰にでもわかるような形で世の中に知らしめるのが本当の“決意表明”なんだってことに気がついて、その通りにいま実行し続けている。すばらしいね」

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