恩師が語る、岩貞祐太が「トラの奪三振王」に急成長したわけ (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 横浜商科大の佐々木正雄監督は、学生球界に名だたる"猛将"である。激励、叱咤の爆声がグラウンドにとどろくと、岩貞は相手打線より味方のダグアウトを気にして、次第に自分を見失うこともあった。

「岩貞は、ほんと好青年なんだ。だから、なんでも自分のなかに受け入れてしまう。学生時代からそうだった」

 佐々木監督が手塩にかけた4年間を振り返る。

「あれだけのボールを放れるんだから、もっとマウンドで偉そうにしていればいいのに、ランナーをひとり、ふたり出すと、自分を信用できなくなるのかな......バッターと戦うことに集中できなくなるんだ」

 それでも辛抱を重ねてリーグ戦で使い続け、4年秋にはリーグ戦で6勝を挙げ、最優秀投手賞を獲得。その年、ドラフト1位で阪神から指名を受け、入団することになった。

「プロに行ってからのアイツは、詰まっていたんだ。阪神の1位ということで、期待は大きいし、注目もされる。ファームでくすぶっていれば、痛烈に批判もされる。そのすべてを受け入れてしまい、消化も吸収もできずにね......。そういうフン詰まりみたいな状態だったのが、昨年までの2年間だったんじゃないのかなぁ」

 教え子がプロに進んでからも、折に触れて連絡を取り、言葉をかけてきた佐々木監督には、これまでの岩貞の苦闘が手に取るようにわかる。

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