2016.05.07

オリックス・金子千尋「846球」に込められた今季に懸ける思い

  • 波佐間崇晃●文 text by Hazama Takaaki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 4月30日に行なわれたオリックス対楽天戦。金子千尋が投じたその日の109球目は、打者のインコースいっぱいに構えた伊藤光のミットに寸分違わず吸い込まれた。27個目のアウトとなる見逃しの三振を奪った金子はポンとグラブを叩き、マウンドに駆け寄った伊藤と拳を突き合わせた。

5月6日のロッテ戦で8回を無失点に抑える好投で今季2勝目を挙げた金子千尋

 金子が手にした今シーズン初勝利は、6度目の登板でようやくつかんだ白星だった。久しぶりにお立ち台に上がった金子は、巻き起こるスタンドからの歓声に応え、勝利を誇るように両手を叩いた。

「僕が投げた試合は今年初めて勝ったので、それが何よりもうれしいです」

 昨年は、オフに行なった右ヒジの遊離軟骨除去手術の影響で一軍での初登板は5月23日までずれ込んだ。その際、「チームに迷惑をかけてしまった」と悔しさをにじませたが、今年はそれを取り返すように春季キャンプから例年以上に早い仕上がりを見せていた。オープン戦では3試合に登板して防御率0.60と、万全の状態で開幕を迎えた。

 しかし、いざシーズンが始まると調子が上がらない。3月25日、西武との開幕戦では四死球7と大乱調。特に、金子の代名詞ともいえる制球力が鳴りを潜めた。勝利を意識するあまり、コーナーを狙いすぎ、わずかに外れるという場面も少なくなかった。本人が「感覚というより気持ちの問題」と話したように、投球後にマウンドでもどかしそうに天を仰ぐ姿が印象的だった。