ヤクルト優勝秘話。最下位チームを支えた「裏方たちの献身力」 (5ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuchi

 乱橋バッティング投手は、現役時代を含め、今年で優勝は6回目だという。

「川端、山田、畠山が打撃タイトルを獲りましたが、今年は投手陣が良かったですよね。この2年、成績が悪くてピッチャーたちはいろいろ考えることもあったと思うんです。その悔しさが生きたと思います。秋吉(亮)も厳しい場面で投げて経験を積んで成長した。去年は、7〜9回で何度も試合を落としたけど、今年はそこで粘ることができた。捕手の中村(悠平)も、去年『何で打たれたのか』を考えて、今年はピッチャーから信頼を得たように見えました。マウンドで首を振られることが減りましたから。

 90年代のチームは池山(隆寛)さん、古田(敦也)さん、広澤(克実)さんとスター選手がいて、完成されていましたが、今年は山田も慎吾も真のスターになろうとしている最中だし、まだまだ発展途上。これから伸びるのか、落ちるのかは、本人たちの努力次第だと思います。僕らはサポートをしっかりして、彼らに気持ちよく練習してもらうだけです」

 また杉村コーチは、「常々、うちのスコアラー陣は優秀だと話してきたけど、優勝してあらためて感謝の気持ちが強くなりました」と言った。

「スコアラーって、ひとりで行動する孤独な仕事なんですよ。雨が降ろうが風が吹こうが、暑かろうが寒かろうが、バックネット裏に座って試合を見続けなければならない。試合が終われば夜遅くまでデータを分析する。オレはスコアラーの経験はないけど、その大変さは見ているとわかる。スコアラーだけでなく、日の当たらない場所で働く彼らの苦労が、優勝で少しは報われたかと思うと、本当にうれしいよね」

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