ヤクルト優勝秘話。最下位チームを支えた「裏方たちの献身力」 (3ページ目)
また、今シーズンのヤクルトを語る上で外せないのがリリーフ陣だ。本拠地・神宮球場はブルペンがファウルグラウンドにあり、肩慣らしを始める投手たちの姿は自信に満ち溢れ、見る側にとってはなんとも頼もしい存在だった。試合中、彼らの投球練習の球を受け続けたのは、江花正直ブルペン捕手と、大塚淳ブルペン捕手のふたりだった。
江花ブルペン捕手に、今シーズンのブルペン陣について聞くと、「オンとオフの切り替えがよかった」と言い、こう続けた。
「去年まではブルペンで肩を2回つくっていたのですが、今年は1回でした。だから、ピッチャーはそれまでじつにリラックスしていましたし、目標とする『失点しても最小失点で抑える』『リードは守り切る』への意識の高さを感じました。今年のブルペンを語るなら、ロマン、オンドルセク、トニー(バーネット)の3人ですよね。彼らが本当にいい関係を築いてくれました。去年までは、ロマンは先発だったので、ブルペンで英語を話すのはトニーひとりでしたけど、今年は話し相手がいた。それにトニーは、メジャーで実績のあるオンドルセクが入ったことで刺激を受けたと思います。今年は2月1日に初めてトニーの球を受けたのですが、すごいボールを投げていましたから。『クローザーはオレだ!』というトニーの迫力と覚悟が伝わってきました」
江花ブルペン捕手は、もちろん日本シリーズでもチームの一員として戦った。
「気持ちはいつもと変わりないですよ。ただ、このメンバーで戦うのはあとわずかですからね。来年、また同じメンバーで戦えるかはわからない。そういう意味で、これから受ける一球一球が、そのピッチャーと僕にとって、最後の一球になるかもしれない。一球一球を噛みしめて受けたいですね」
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