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かつてのVメンバーが語る、宮本慎也の秘密 (4ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

『野球』という名のパズルがあったとしたら、宮本は不断の努力でひとつひとつのピースを揃えていった選手だったのだろう。そう思いこちらが言葉を失っていると、池山はニヤリと笑いあることを教えてくれた。

「慎也の引退試合で、僕はつば九郎(ヤクルトのマスコットキャラクター)に絶対フェンスに上げるんだぞって指示したんですよ」

 ヤクルトの選手にとって、右翼席のフェンスによじ登りファンに感謝を伝えるのはステイタスであり、憧れの瞬間だという。

「僕も登ったことがありますが、あれは許された人間しかやってはいけないんです。ヘタに行くと『オマエがなんでやねん!』と突っ込まれるのがオチですから。慎也は2001年の日本一の時はレギュラーで、しかも2番打者としてチームの勝利に貢献しているのに、『まだあそこに登れる選手じゃない』って遠慮したんです。そこで今度こそは登らせたいと、つば九郎をけしかけたんだけど、見たらもう自分から登っていました(笑)」

 宮本はフェンスを登ると金網をまたいでファンに対し「ありがとう!」と叫んだ。そして後に、こう語った。

「あれが一番やりたかった。本当は優勝してやりたかったけど、01年の時はまだそういう選手じゃなかったのでできなかった。あれだけはやろうと決めていた」

 日本一の名脇役が、惜別の雨の中、主役となった最後の一瞬だった。

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