バレンティンの55本塁打を支えた「3つの助言」 (2ページ目)
そして技術面での向上もあった。来日する前、日本球界を知るある人物から、「日本の投手は変化球が多いからバットを振りにいったらダメ」とアドバイスを受けた。それから試行錯誤を重ね、ようやく完成に近づいた。「スイングが小さくなって、ポイントも近くなった」と宮本慎也もバレンティンの変化を認める。大振りしなくなったことで好不調の波が小さくなり、安定感が飛躍的に向上した。一昨年、昨年と苦しんだ打率でも、今季はリーグ1位を維持(9月11日現在.340)。さらに、左足を大きく上げる打撃フォームも、カウントや相手投手に応じて、"すり足"に変えるなど工夫を凝らすようになった。
「すり足はスイングの始動を遅らせることができるし、始動してからも短い時間でスイングにつなげられる。それに、球種の判断がしやすいんだ」
そう語るバレンティンは「打席の中で感じたことをやっているだけだ」と笑うが、対戦相手にしたら、スイングを小さくして安定感が増したのに、もともと持つパワーと統一球の影響で打球の飛距離が変らないのは厄介なことだ。8月21日、22日の2試合でバレンティンに4本塁打を浴びた巨人の原辰徳監督は、「ベーブ・ルースじゃないんだから」と嘆き、自軍投手に奮起を促したほどだ。
さらに、小川監督がバレンティンの武器を語る。
「ホームランにできるゾーンが広いのもある。頭の高さの球でも、低目の球でもホームランにできちゃうのでね」
今季のバレンティンは穴が少ない。4月27日の巨人戦では菅野智之から内角低めのワンシームを、体を開かずにレフトスタンドに運んだ。9月10日の広島戦では前田健太からアゴ付近の高さの151キロのストレートを左中間に弾き返した。そして、もっとも増えたのが、外角への緩い変化球を前でさばいて本塁打にするシーンだ。8月21日の巨人戦で高木京介から放った44号も、前でさばいてホームランにした1本だった。140キロ台後半のストレートに押し込まれていたが、高木が投じた勝負球の外角低目へのカーブを左手一本で拾い上げた。
元プロ野球選手でライバル球団の関係者も、「昨年までなら同僚のミレッジの方が、外角の遅い変化球を拾ってホームランにしていた。バレンティンは体が突っ込んで空振りすることが多かったけど、今年は体が突っ込まないから、外角の遅い変化球にも対応するんだよ」と舌を巻く。
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