大谷翔平が「より長く最高級でいる」ためにドジャースが描く設計図 負荷管理専門のコーチが語る二刀流の未来 (2ページ目)
【レブロン、ブレイディに学ぶ最高級で居続ける思想】
プロ野球選手のピークは一般的に27歳から29歳と言われる。大谷はすでに31歳。契約は今季を含めまだ8年残っている。ドジャースが追い求めるのは、今季だけではなく、30代の大谷をいかに高いレベルで走らせ続けるかである。その点について、マクダニエルコーチは、こう説明する。
「調整や負荷管理は、当然関わってくると思います。どうトレーニングするか、何を食べるか、どう眠るか、ストレスが体にどう影響するか、移動やその距離も含め、すべてが大きな要素になります。状況は常に変わります。
NBAやNFLで30代後半までプレーを続けている選手たちを見ても、必ずしも試合数を減らしているわけではありません。ただ、彼らはさまざまな状況に応じて、自分をどう適応させるかを学んでいる。私はいつも、まずは自分の体を最善の形でケアすることから始まると思っています。そして、それは翔平が実際にやっていることです」
彼がイメージするのは、NBAならレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)だろう。睡眠、栄養、回復への投資を続けながら、年齢とともにプレースタイルを変化させ、40代に入ってもリーグ最高峰のレベルでプレーしている。NFLならトム・ブレイディ(元ニューイングランド・ペイトリオッツQB)だ。炎症を抑える食事、水分補給、柔軟性の維持、睡眠管理を徹底し、45歳まで第一線を維持した。
マクダニエルコーチが強調するのは、単に「休ませること」ではない。大谷を使わないための管理ではなく、大谷を長く最高レベルで使うための管理である。自身にかかる負担をどう処理し、負荷をどう配分するか。そこまで含めて、二刀流は初めて持続可能になる。
そのマクダニエルコーチに、筆者がこの1カ月の取材で感じていた疑問をぶつけてみた。今季は投手としての体づくりが非常にうまくいっている。一方で、それが打者としての爆発力に影響している可能性はないのか。大谷は今季8本塁打を放っているが、まだ彼らしい特大の一発は多くない。
彼は否定しなかった。「トレーニングの観点では、何をするにも必ず何らかの代償がある」。二刀流が完全に無傷で両立するものではないことを認めたうえで、それでも「ああいう大きな本塁打が出るのは時間の問題だ」と言った。
二刀流は、才能だけでは続かない。休養、睡眠、栄養、移動、負荷管理。ドジャースは今、大谷翔平という前例のない才能を、「どう使うか」ではなく、「どう長く持続させるか」という段階で見つめている。「史上最強」から、「史上最も長く続く二刀流」へ――。その設計図が、いま少しずつ描かれている。
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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