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終わったはずのシーズンから始まった伝説 ロサンゼルス・タイムズが伝えた山本由伸「中0日」登板の歴史的夜 (3ページ目)

  • text by Los Angeles Times

 そして山本がロジャース・センターで「やり投げ」のルーティンをこなし、キャッチボールする姿を見て、フリードマンは第7戦での登板を現実的に考え始める。ただ、山本自身にはまだ投げられるという確信はなかった。

「自分が投げるとは思っていなかった」と山本は言う。

「でも練習してみたら感覚がよくて、気づいたら(試合の)マウンドにいました」

【通訳もゲンを担いで勝負パンツ】

 山本の通訳、園田芳大(よしひろ)も準備はできていた。

 ゲンを担ぐ園田は、山本の登板日にはいつも同じ"勝負パンツ"を身に着けている。第6戦でもそのウサギ柄のボクサーパンツを穿いていた。そして山本の再登板があるかもしれないと感じ、第7戦も同じパンツで臨んだのだ。

「万一に備えて、洗いませんでした」と園田は認めている。

 山本はプロ入り後(先発転向後)、日米を通じて、連投したことは一度もない。9回にブレイク・スネルの救援を託された時には、どんな投球になるかわからなかったという。

 1アウトからスネルが残した走者2人を背負って登板すると、カークに死球を与えて満塁。続くドールトン・バーショを本塁フォースアウトのゴロに仕留めるも、アーニー・クレメントに投じたカーブはレフトのフェンス際まで運ばれた。それを守備固めに入っていたアンディ・パヘスがウォーニングゾーンでキケ・ヘルナンデスと交錯しながらも捕球し、ブルージェイズのサヨナラ勝ちを防いだ。

 山本は10回を三者凡退で抑え、11回表にスミスの本塁打で5対4とリードをもらい、11回裏を迎えた。

 先頭打者のブラディミール・ゲレロJr.に時速96.9マイル(約156キロ)の速球を二塁打され、アイザイア・カイナーファレファの送りバントで三塁に進まれた。アディソン・バーガーには四球を出して走者一、三塁。しかし最後はカークを併殺に打ち取り、試合を終わらせた。

 最後の瞬間について山本は、「本当に信じられなかったというか、最後に何を投げたかも思い出せないような、そういった興奮がありました。チームメイトが自分のところに来てくれた時には、今までで一番くらいの喜びを感じました」と語っている。

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