全米中が大フィーバー。今、ア・リーグの三冠王争いが面白い! (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 そんな折、レンジャーズには同じスラッガータイプの若手一塁手が台頭してきました。ひとりは2008年のドラフト1巡目、全体11位でプロ入りしたジャスティン・スモーク(現シアトル・マリナーズ)、そしてもうひとりは、今もレンジャーズでレギュラーを務めているミッチ・モアランドです。その結果、デイビスは出場機会を失うことになり、2011年7月、上原浩治投手(現ボストン・レッドソックス)とのトレードでオリオールズへと放出されてしまったのです。

 オリオールズに移籍した年は、31試合の出場でホームランはわずか2本。目立った活躍はできませんでした。そして、2012年も開幕当初はレギュラーではなく、5月6日に行なわれたレッドソックスとの延長戦では、投手が足らなくなったことで緊急登板。2イニング無失点で勝利投手となり、大きな話題となりました。ただ、メジャーリーグで野手が登板するのは、控え選手の役目です。つまり、当時のデイビスは主力と見なされていませんでした。

 しかしその後、デイビスはレギュラーの座を掴み取ります。ホームランを量産し始め、最終的には自己最多となる33本塁打をマーク。レギュラーシーズン最後の7試合で7本塁打を打ち、絶好調のままシーズンを終えました。

 そして迎えた2013年――。デイビスはいきなり大ブレイクを果たします。メジャー史上4人目の快挙となる「開幕から4試合連続ホームラン」を成し遂げ、4月は打率.348・9本塁打・28打点という好成績をマーク。その結果、ア・リーグ最優秀選手(月間MVP)に選ばれました。さらにその勢いは止まらず、開幕当初は「春の珍事」と思われていたものの、5月も打撃部門の上位をキープ。昨年三冠王のカブレラと順位を争うほどの活躍を見せています。

 今、ボルチモアでのデイビス人気はすさまじく、5月29日には本拠地球場で彼のTシャツが先着1万名に配られました。Tシャツには、彼の愛称である「クラッシュ・デイビス」の文字。そのニックネームは、1988年に公開された映画『さよならゲーム』から用いられました。その映画は、松井秀喜選手が昨年在籍したダーラム・ブルズという実在のマイナーチームを舞台に、主人公のケビン・コスナーがベテランキャッチャーを演じたもので、その主人公の名前が「クラッシュ・デイビス」でした。同じ「デイビス」という名前と、ボールを「クラッシュ」するイメージがピッタリということで、地元新聞が頻繁に使うようになり、それが今では全米中に浸透しました。

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