全米中が大フィーバー。今、ア・リーグの三冠王争いが面白い!
三冠王争いに突如名乗りを挙げたオリオールズのクリス・デイビス「2年連続して三冠王が誕生するのか?」。アメリカでは今、この話題で持ちきりです。その話題の中心となっているのは、デトロイト・タイガーズのミゲル・カブレラ。昨年、カール・ヤストレムスキー(元ボストン・レッドソックス)以来45年ぶりの三冠王に輝いた、メジャーを代表するスラッガーです。
歴史を振り返ると、カブレラ以前に述べ13人の三冠王が誕生しています。そのうち2度、三冠王に輝いたのは、ロジャース・ホーンスビー(1922年&1925年/当時セントルイス・カージナルス)と、テッド・ウィリアムズ(1942年&1947年/当時レッドソックス)のふたりだけ。2年連続で三冠王となった選手は、過去ひとりもいないのです。また、三冠王に輝いた翌年は、ほとんどの選手が著しく数字を落としています。三冠王を達成するのは選手にとってピークの状態なので、翌年に成績が落ちるのも仕方のないことでしょう。実際、三冠王達成の翌年、打率が前年より上回った選手は3名、打点は1名、そして本塁打が上回った選手はひとりもいません。
昨年、カブレラは打率.330・44本塁打・139打点という成績で三冠王となりましたが、そんな過去のデータがある中、今年はどれも前年度を上回りそうなペースで打っているのです。6月5日現在、打率.366(ア・リーグ1位)、17本塁打(同2位タイ)、65打点(同1位)をマーク。特に一番話題となっているのが、打点の多さです。1930年、当時シカゴ・カブスのハック・ウィルソンという巨漢バッターがシーズン191打点というメジャー記録を樹立しましたが、6月5日時点での65打点は、その偉大な数字に並ぶペースなのです。
この調子で行けば、カブレラの2年連続三冠王も間違いなし――。そう思いきや、なんとカブレラを脅かす選手が登場しました。しかもその選手は、過去にタイトルを獲ったことがなく、まさに意外な選手。それがボルチモア・オリオールズの27歳、クリス・デイビスです。
まずは、デイビスの略歴を紹介しましょう。2006年、ドラフト5巡目でテキサス・レンジャーズに入団したデイビスは、翌2007年にシングルAとダブルAで合わせて36本塁打を放ち、パワーヒッターとして早くも頭角を現しました。そして2008年、メジャーデビュー。80試合の出場ながら17本塁打を記録し、スラッガーとしての片鱗を見せたのです。さらに2009年も21本塁打をマーク。ただ、ホームランを量産しつつも、一方で非常に荒削りなバッティングゆえに、150個もの三振を喫しました。当時はまさに、「ホームランか、三振か」というバッターだったのです。
1 / 3
プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)