【高校野球】0対7からの大逆転、選抜王者・愛工大名電を撃破... 熱血教師・吉田洸二が公立校・清峰で起こした歴史を変えた夏 (3ページ目)
そこで、清峰ベンチは思い切った戦術に出る。古川に対して「動くな」と指示を出したのだ。吉田監督がその真意を明かす。
「古川の守備では、バントが全部セーフになってしまいます。だからピッチャーは動かず、守備のうまいファーストとサードに全部処理させろと伝えました。バスターされた場合はしょうがないと」
この奇策は功を奏する。結果的にこの日に愛工大名電が喫した39アウトのうち、バントでのアウトは10個にのぼった。また、古川にバント処理をさせないことで、体力を温存できる副作用もあった。吉田監督は試合途中から、「バントされるほうが助かる」という心境になっていた。
古川の粘り強い投球もあり、試合は2対2のまま延長戦に突入。延長13回表に古川が自らのバットで決勝点を叩き出し、清峰が4対2と勝利。まさに無欲の大金星だった。
【上甲監督率いる済美にも勝利】
たとえ愛工大名電のユニホームを前にしても、清峰の選手が臆することはなかったと吉田監督は証言する。
「知らないって怖いですよね。清峰の子たちは、県外のどのチームが強いかなんて知らないんです。あのPL学園だって、まったく知らなかったんですから」
余談ながら、愛工大名電の2番手として好リリーフした十亀は現在、西武のスカウトとして山梨学院に出入りする。吉田監督とは当時の思い出話に花を咲かせることもあるそうだ。
清峰の快進撃は1試合では終わらなかった。2回戦では、済美(愛媛)と対戦。2004年春の選抜優勝校であり、吉田監督が甲子園まで勉強しにいった奇縁もあった。この試合、清峰は9対4と快勝している。
済美戦については、後日談がある。上甲監督は「なぜ県立校に負けたのか」と謎を解き明かすために、のちに清峰を訪れたという。冬場の練習をひとしきり視察したあと、上甲監督はポツリとこう漏らした。
「日本一は時間の問題だな」
驚いた吉田監督が理由を尋ねると、上甲監督は笑顔でこう答えたという。
「こんなにきつい練習を笑ってやってるんだから。甲子園は常軌を逸した人間しか優勝できないんだよ」
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