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使命感に押し潰されかけた今川優馬を救った父の言葉 フルスイングでつかんだ涙のドラフト (3ページ目)

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru

【優馬の名前に込めた父の思い】

「9月頃、両親とテレビ電話をする機会があって、そこで初めて悩みを打ち明けました。母は、僕の顔を見るなり『つらいんでしょ......』と言って。その言葉を聞いた瞬間、一気に感情があふれてしまいました。でも、その時に父が言ってくれたんです。『野球を楽しんで、思いきりバットを振ればいい』って」

 父・広美さんの言葉に、今川は打者としての原点を再確認できた。ありのままの思いを素直に吐き出すことで、気持ちも楽になった。それまで築き上げてきた野球スタイル。言わば、モットーである「フルスイング」の大切さにあらためて気づかされた今川は、自身を覆っていた霧を振り払うことができた。そして、その代名詞が評価され、ドラフト指名を勝ち取った。

 優馬という名には、父の強い想いが込められている。競走馬の生産地として知られる北海道・静内町(現・新ひだか町)で生まれ育った父は、大の馬好きだった。競馬を題材にした漫画『優駿の門』(作:やまさき拓味)の主人公・光優馬にちなんだもので、馬力があり、縁の下の力持ちとしてチームを支え、なおかつ優しい人間に育ってほしい──そんな願いが重ねられて「優馬」と名づけられたという。

 プロ6年目を迎える2026年シーズンも、フルスイングを信条とする今川は、その名にふさわしい存在であり続けるはずだ。

著者プロフィール

  • 佐々木亨

    佐々木亨 (ささき・とおる)

    スポーツライター。1974年岩手県生まれ。雑誌編集者を経て独立。著書に『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社文庫)、『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボールマガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)などがある。

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