【夏の甲子園2025】聖隷クリストファーは「死のゾーン」を勝ち上がれるか 2年生左腕・髙部陸に敵将も「イメージ以上や」と驚愕
衝撃の甲子園デビューになるのではないか──。
今夏の静岡大会を取材した際、聖隷クリストファーの2年生左腕・髙部陸の投球を見て、そんな予感を抱いた。
身長175センチ、体重68キロと、体格的に目を引くわけではない。最高球速は147キロだが、超高校級というほどの数字でもない。だが、髙部のボールをひと目でも見たら、その非凡さにうならされる。
強烈な回転のかかったストレートは失速することなく、捕手のミットに突き刺さる。スピードガンの数字以上に圧力を感じるボールだ。
静岡大会準決勝・藤枝明誠戦では、6者連続奪三振をマーク。髙部の快速球は、ことごとく打者のバットの上を空過した。
甲子園でも同じようなパフォーマンスを披露できれば、高校野球ファンは髙部の逸材ぶりを実感するはず。そんな私の予想は、意外な形で裏切られることになる。
こう書くと失望したように受け取られてしまうかもしれないが、むしろ逆だ。当事者の証言をもとに、髙部の甲子園デビューを振り返ってみたい。
初戦の明秀日立戦で失点1完投勝利を挙げた聖隷クリストファーの2年生左腕・髙部陸 photo by Matsuhashi Ryukiこの記事に関連する写真を見る
【視覚と脳を超越するボール】
8月9日、聖隷クリストファー対明秀学園日立(茨城)の甲子園1回戦。試合前の会見で明秀学園日立・金沢成奉監督に「髙部投手の映像を見て、どんな印象を持ちましたか?」と聞いてみた。すると、金沢監督はこう答えた。
「あのストレートは一級品ですよね。カットボールもいい。このふたつが全投球の8〜9割を占めてくる。まだ2年生なのに、自信満々で投げてくるし。将来プロにいけるピッチャーだと思います。茨城県では見たことのないレベルです」
そして、金沢監督は興味深い考察を示した。
「人間は視覚と脳の関係で、だいたいのピッチャーは『このへんで打とう』とイメージどおりにボールがくれば、打てるわけです。でも、高部くんはたぶん、視覚と脳のギャップが強いはずです。こういう球が投げられるピッチャーは、なかなかいません。ただ速いだけのピッチャーはたくさんいるんですけどね。ウチは過去にも大島高校(鹿児島)の大野稼頭央くん(現・ソフトバンク)とか、いい左ピッチャーとも対戦してきました。髙部くんもトップクラスなのだろうと思います」
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。




























