【夏の甲子園2025】聖隷クリストファーは「死のゾーン」を勝ち上がれるか 2年生左腕・髙部陸に敵将も「イメージ以上や」と驚愕 (3ページ目)
その後、守備の乱れもあって3回に1点を失ったものの、髙部は5回まで被安打2と明秀学園日立の強打線を封じる。ただし、奪三振は2に留まった。
明秀学園日立の金沢監督は試合中、髙部に対して「イメージ以上や」と感じていたことを明かす。
「真っすぐでガンガンくると思っていたのに、こんなに奥行きが使えるピッチャーとは思わなかった。こんなにピッチングに幅があるなんて」
金沢監督は髙部のストレートとカットボールのコンビネーションを強く警戒していた。しかし、実際には100キロ台のカーブや130キロ弱で落ちるチェンジアップの精度も高かった。髙部にさまざまな球種を使われたことで、打者は的を絞りにくくなった。三振は少なくても、凡打の山が築かれた。
【敵チームの応援も味方に】
6回表に聖隷クリストファーが1点を勝ち越した直後、スタンドに異変が起きた。
前夜の雨と交通渋滞で到着が遅れていた、明秀学園日立の吹奏楽部員がアルプススタンドに到着。すると、一段とボリュームアップした一塁側スタンドの応援につられるように、甲子園球場に手拍子が自然発生したのだ。その波は、バックネット裏で観戦するファンにまで伝播していく。
まるで甲子園球場が一体となって、明秀学園日立を応援するようなムードが醸成された。甲子園では、これまで何度もこのような「異空間」が発生し、波乱の展開を演出してきた。高校生が平常心を保つことなど、不可能と思えるようなムードである。
ところが、マウンドの髙部は何も変わらなかった。明秀学園日立のクリーンアップを淡々と打ち取り、三者凡退に。手拍子は沈静化し、呼応するように明秀学園日立の反撃ムードはしぼんでいった。
この時、何を思っていたのか。試合後に報道陣に問われた髙部は、こう語っている。
「相手の応援団が入ってきて、自分的にリズムをつくることができて。相手の応援もあったから、自分もリズムよく投げられたのかなと思います」
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