検索

【夏の甲子園2025】幻に終わったパーム秘話 日大山形の右腕・小林永和が格闘家・安保瑠輝也から学んだ「デモリッションマン」の精神

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

── 格闘家の安保瑠輝也(あんぽ・るきや)選手のファンなんですか?

 日大山形のエース右腕・小林永和(3年)の試合後インタビューがひと段落したところで、そう尋ねてみた。出場選手が記入するアンケートの回答内容をもとに質問したのだが、小林は破顔一笑してこう答えた。

「はい! 自分は格闘技が好きなんですけど、安保選手のキックはすごくきれいで。足が柔らかくて、高くまで上がるんです。この冬、練習用の帽子に安保選手のキャッチコピー(デモリッションマン)を書いて、練習しました。自分はもともと真っすぐが速くなかったんですけど、『キャッチャーミットを破壊しよう』『バッターを破壊してやる』という思いをこめて、練習したんです」

 安保はインフルエンサーとしても活躍する格闘家である。K−1を主戦場とした際についたキャッチャーコピーは「デモリッションマン」。日本語に訳すと「破壊者」になる。

多彩な変化球で強打の県岐阜商打線を4回までノーヒットに抑えた日大山形の小林永和 photo by Matsuhashi Ryuki多彩な変化球で強打の県岐阜商打線を4回までノーヒットに抑えた日大山形の小林永和 photo by Matsuhashi Ryukiこの記事に関連する写真を見る

【県岐阜商の強力打線を4回まで無安打】

 昨秋まで控え投手だった小林は、「デモリッションマン」の精神を胸に猛練習に励み、今夏は初めて背番号1を獲得。本田聖との二枚看板で山形大会を勝ち上がり、県岐阜商との甲子園初戦に先発登板した。

 ただし、気になることもあった。県岐阜商戦での小林は変化球主体の配球で、ストレートをあまり投げなかったのだ。

 そのことを指摘すると、小林は人懐っこい笑顔でこう答えた。

「まあ、変化球で多少破壊できたかなと思います!」

 身長177センチ、体重70キロとやや細身の体格で、ストレートの最高球速は139キロ。現代の高校野球では、とりたてて目立つ数字ではない。

 だが、小林は県岐阜商を立ち上がりから封じ込める。県岐阜商は今夏の岐阜大会6試合で、チーム打率.396、8本塁打を記録している。そんな強打線を4回までノーヒットに抑えたのだ。

 ただし、ストレートはあまり投げなかった。スローカーブ、通常のカーブ、チェンジアップとタイミングを外すボールに、120キロ台のスライダー、シンカーで揺さぶりをかける。左右の変化に奥行きまで使い、うまくかわしていく。高校生で、ここまで変化球を使いこなせる投手は珍しいだろう。

1 / 2

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る