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【夏の甲子園2025】まさかの甲子園出場→大金星 東北学院4番でエース・伊東大夢はスマホを見て正気に戻った

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

東北学院「悲運のエース」が語るあの夏(中編)

 2021年夏、異変が起きたのは7月17日だった。石巻市民球場での宮城大会4回戦。優勝候補の大本命である仙台育英が、仙台商に2対3で敗れたのだ。

 東北学院のエースで4番打者の伊東大夢は、その結果を知って「あれ?」と首をかしげたという。

 絶対的な王者が敗れた。自分たちにも、チャンスが出てきたのではないか......。そんな淡い思いがもたげてきた。

 とはいえ、東北学院は夏の宮城大会でベスト8が最高戦績である。戦いぶりも盤石とは言いがたかった。

愛工大名電打線を抑え、笑顔でベンチに戻る東北学院時代の伊東大夢さん(左) photo by Sankei Visual愛工大名電打線を抑え、笑顔でベンチに戻る東北学院時代の伊東大夢さん(左) photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【3回戦以降はすべて逆転勝利】

 初戦(2回戦)はリードを許すも、7回に逆転して泉松陵に6対1で勝利。3回戦は石巻工に6対3。4回戦は仙台東に9対3で逆転勝ち。準々決勝は東北学院榴ケ岡に先取されるも、直後に逆転。最終的には15対2で5回コールド勝ちを収めた。3回戦以外はすべて逆転勝ちである。

 伊東は自虐的に、東北学院のチームカラーを説明した。

「東北学院は『お坊ちゃん』というか、性格的におっとりしている人が多いんです。好戦的な人がいなくて、試合が始まっても始動が遅い。だから逆転のチームカラーになったのかもしれません」

 準決勝の相手は、因縁のある古川学園だった。春は伊東が「ベストピッチ」と振り返る快投で完封勝ちしたとはいえ、夏は独特のムードがある。

 伊東は「調子がいい」と感じつつも、マウンドから古川学園の圧を味わっていた。

「古川学園はチーム全体がギラギラしていて、監督さんからも『気持ちで負けちゃダメだ』と言われていたんですけど、序盤からのまれてしまいました」

 2回までに3点を奪われるなど、苦しい展開。それでも、東北学院には「切り札」があった。伊東は笑顔で振り返る。

「直井(良偉人/らいと)という学生コーチがいて、試合には出ずにノッカーや三塁コーチャーをやっていました。すごくポジティブなヤツで、直井が伝令にくると流れが変わるんです。1年秋から学生コーチに転身して、チームを支えてくれていました」

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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