【夏の甲子園2025】東北学院「悲運のエース」が語るあの夏の真実 愛工大名電に勝利→出場辞退
東北学院「悲運のエース」が語るあの夏(前編)
伊東大夢という選手のことを「悲運のエース」と記憶する野球ファンは多いだろう。
2021年夏。高校野球宮城大会で圧倒的な優勝候補に挙がっていたのは、伊藤樹(現・早稲田大4年)を擁する仙台育英。2017年夏から県内負けなしの常勝時代が続いており、同年夏も甲子園出場を決めれば5連覇になるはずだった。
ところが、仙台育英が4回戦で仙台商に敗れる大波乱が起きる。群雄割拠の宮城を制したのは、伏兵の東北学院。「エースで4番」の大黒柱だったのが、伊東である。
2021年夏、甲子園初戦で愛工大名電に勝利し校歌を歌う東北学院の選手たち photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【負けることなく終わった高校野球】
春夏通じて初出場だった東北学院は、甲子園初戦で優勝候補の愛工大名電(愛知)と対戦。田村俊介(現・広島)、寺嶋大希(現・NTT東日本)、宮崎海(現・横浜商科大4年)ら逸材を多数擁する愛工大名電に、伊東は3回までパーフェクトピッチングを見せる。東北学院は5対3で勝利し、2回戦に進出した。
ところが、ここでアクシデントが発生する。東北学院のベンチ入りメンバーのなかで、新型コロナウイルスへの陽性者が確認されたのだ。
陽性反応が出たのは1名だけ。当該選手をベンチから外して、2回戦に臨むことも可能だった。だが、東北学院が選んだのは、「出場辞退」という選択。理由は「感染者、濃厚接触者の特定につながる恐れがある」(東北学院・阿部恒幸校長/当時)ためだった。
負けることなく終わった高校野球──。
その無念は経験した者にしか、知り得ない。当時、気持ちの整理がつかない様子の伊東のコメントがメディアに載ったこともある。あれから4年が経った今も、無念は成仏することなく、くずぶり続けているのだろうか。
現在、伊東は立教大の4年生。準硬式野球部でプレーしている。ドラフト候補と目された伊東が、大学で硬式野球を続けなかったことも驚きがあった。私は伊東に会うため、立教大のキャンパスがある池袋へと向かった。
「貴重な機会をいただいて、ありがとうございます」
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。




























