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2025年のドラフト上位候補 創価大・立石正広が波乱の1年を乗り越えてたどり着いた新境地

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 気温9度。断続的に小雨が降りしきる極寒の神宮球場で立石正広(創価大)が放った打球は、右翼方向に美しい弧を描いた。

 とてもフルスイングをしたようには見えなかった。佛教大の先発右腕・合木凜太郎が投げ下ろした141キロのストレートに、軽く合わせたようなスイング。てっきりライト後方のフライアウトかと思った打球は、フェンスを越えて右翼スタンドに並ぶ青いシートの間に消えていった。

「あのスイングであそこまで飛ばすなんて!」

 思わずそう叫んでしまった。明治神宮大会の第4試合ともなると、スタンドは閑散としている。だが、立石の一打は見る者の心を動かす力があった。

2025年のドラフト上位候補の創価大・立石正広 photo by Ohtomo Yoshiyuki2025年のドラフト上位候補の創価大・立石正広 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る

【課題は好不調の波の激しさ】

 試合後、立石はこの一打をこんな言葉で振り返っている。

「ある程度、真っすぐに絞っていました。逆方向に飛ばすのは自分の長所でもあるので、あの感じならいくだろうなと思いました」

 11月20日、明治神宮大会1回戦・創価大対佛教大の1回表。立石の第1打席で飛び出した2ラン本塁打だった。試合前から「めちゃくちゃ寒いな」と感じていた立石は、暑さを覚えるくらい上着を羽織り、カイロで手を温めて試合に臨んでいたという。

 この日の立石はこれで終わらない。2打席目には122キロのスライダーをとらえ、右中間フェンスを直撃する二塁打。5打数3安打2打点という立石の活躍もあって、創価大は8対4で快勝している。

 立石はよほどのことがない限り、2025年ドラフト戦線の中心人物になるはずだ。あるプロスカウトと2025年のドラフト候補について話した際、立石について聞いてみるとスカウトは「ああ、彼は間違いないね」と力強く言った。

 身長180センチ、体重87キロとたくましい体躯の立石だが、その打球の迫力や飛距離は日本人離れしている。

 今夏は大学3年生にして大学日本代表に選ばれ、チェコ、オランダで国際大会を転戦。1学年上の渡部聖弥(大阪商業大→西武2位)に立石について聞くと「打球速度は速いしコンタクト率が高くて、同じ右打者として『めちゃくちゃいいな』と感じます」と語っていた。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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