王貞治氏の金言を胸に相馬高・寶佑真は「約束の地」を目指す 東京五輪始球式から3年の歩み (3ページ目)
まだ誰もが認める「プロ注目」というわけではないし、そのことは誰よりも寶自身がわかっている。寶は現在の自分を「完成形ではないんで」と、断言する。
「1年生の時に比べるとだいぶ大きくなってはいるんですけど、まだまだ細いですし。夏を投げ切るためにはもっと体力もつけていかないとダメだなって」
現在は178センチ、66キロ。それでも王会長から授かった言葉どおり体づくりを実践している。
食事量を増やし、ウエイトトレーニングにも励む。ただ、やみくもに体を大きくするのではなく、肩回りなどピッチングのうえで大事な部位の強化を意識している。
寶は王会長からの金言をしっかりと咀嚼し、自分に即したトレーニングを積んでいる。だからこそ、プロのスカウトも頷く伸びしろを周囲に印象づけられているのだろう。
今年の夏、福島大会の決勝戦が開催されるのはあづま球場である。
「高校最後の大会の決勝があづま球場というのに、どこか縁を感じています。オリンピックの年はコロナの影響で無観客だったんですけど、今年は大勢のお客さんが来ると思うんで、自分が成長した姿を見てほしいです」
強く発せられた言葉が弾む。
オリンピックの始球式から3年。今度は甲子園を懸けたマウンドでボールを投げる。
寶佑真。いざ、約束の地へ。
著者プロフィール
田口元義 (たぐち・げんき)
1977年、福島県出身。元高校球児(3年間補欠)。雑誌編集者を経て、2003年からフリーライターとして活動する。雑誌やウェブサイトを中心に寄稿。著書に「負けてみろ。 聖光学院と斎藤智也の高校野球」(秀和システム刊)がある。
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