王貞治氏の金言を胸に相馬高・寶佑真は「約束の地」を目指す 東京五輪始球式から3年の歩み (2ページ目)
そんな寶の成長のポイントはふたつある。
まず、ピッチングフォームを今春から解禁された二段モーションにしたことだ。大きく振りかぶるワインドアップモーションである寶の場合、左足を大きく振ることで下半身から上半身へ、より力を伝達できる。ストレートの最速も昨秋の137キロから140キロまで飛躍したのも、成果のひとつである。
その寶には、ピッチングを形成していくうえで参考とするピッチャーがいる。2年生だった2022年に全国制覇を経験した、昨年の仙台育英のエース・高橋煌稀(現・早稲田大)だ。
「高橋さんのように、マウンド上で体を大きく見せる動作が自分にも合っていて。ワインドアップでリズムをつくりながら、横への重心移動の時間をうまく使うことでバッターも嫌がるのかなと思います」
もうひとつのポイントは、試合中のピッチングマネジメントである。
寶の生命線はストレートだが、持ち球のスライダー、カーブ、チェンジアップも有効活用する。全球種をくまなく投じるのではなく、相手バッターの反応を見ながら「今日はこのボールが使えそうだ」と冷静に見極め、ピッチングを組み立てていく。これが強豪相手にも気後れしない後ろ盾となっている。
【スカウトも認めた将来性】
今年の春の県大会。寶は力を示した。
準々決勝の聖光学院戦。試合こそ3対4で敗れたが、寶は相手打線を6安打、自責点1と堂々のピッチングを披露したのである。
聖光学院の斎藤智也監督が、ため息交じりに寶のピッチングを評していた。
「いやぁ、よかったよ。高めのストレートは伸びてくるから全部フライになっちゃう。選手もわかっているんだろうけど、それでもバットを振らされるということは、見た目以上にボールがきてるってことなんだろうね」
さらに、この試合を視察に訪れていた複数のスカウトも、「高卒からプロに行けるかどうかの判断はしづらいが、いいストレートを投げるし、これから伸びそうなピッチャー」と、まずまずの評価を口にしていた。
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