リーグ3連覇の青山学院大・佐々木泰が語った苦悩のシーズン 「あそこで打てなかったら...キャプテン剥奪でした」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 今年にかける意気込みを聞くと、佐々木は主将としての顔をのぞかせた。

「チームを日本一に導ける主将になりたいです。自分の結果に一喜一憂するより、チームのことを考えたほうが自分は結果的にいい方向に回る気がします」

 だが、「結果」は皮肉な方向へと進んでいった。

 開幕から連勝を重ねるチームにあって、佐々木は13打席連続無安打とブレーキ発進。以降は安打こそ出るものの、チャンスでの一本が出ない。1番、6番、2番、5番とさまざまな打順で起用されたが、状況は好転しなかった。

 気がかりだったのは、佐々木本来の伸びやかなスイングが影を潜めていたことだ。チーム打撃を心がけるあまり、スイングが窮屈になっている印象さえ受けた。佐々木の主将としての責任感が、スラッガーとしての魅力を鎖でつないでしまったのだろうか。

【中央大との優勝をかけた大一番】

 5月17日の日本大戦でも、佐々木は4打数ノーヒットに終わった。試合後、青山学院大の安藤寧則監督に「今の佐々木の状態をどう見ていますか?」と聞かずにはいられなかった。安藤監督は苦渋に満ちた表情で、こう答えた。

「同じアウトでもいいアウトと悪いアウトがあって、今は打ちとられているアウトが多いのかな......と感じます。近くで一緒にやっていると、あいつが相当なものを背負っているのが伝わります。今は力が発揮できなくなっている部分はあるし、本人が一番苦しんでいるはずです」

 そして、安藤監督は一拍を置いてからこう断言した。

「でも、いつか爆発する時はきます。そう思わせるのも、あいつなので」

 安藤監督はいつも選手たちを「自慢の後輩たち」と呼ぶ。愛情を注いで見守ってきたからこそ、後輩たちの苦悩が手にとるようにわかるのだろう。安藤監督は佐々木への厚い信頼の言葉を続けた。

「周りを見ても、あいつが打てていないことに対してどうこう言うヤツはいません。普段の練習からしっかりとやってくれている、あいつの姿を見ているからでしょう」

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