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英数学館ナインが指揮官に贈った『広陵を倒したあとの3日間』という経験。「甲子園が目標とはっきりと言えるようになった」 (2ページ目)

  • 井上幸太●文・写真 text & photo by Inoue Kota

 末宗もまた、黒田の期待に応えてみせた。5回に真鍋に適時打を浴び、1点を返されるも、それ以外のイニングは0に抑えた。7回以外は毎回出塁を許しながらも、コースを突く制球力と、無走者でのクイックなどを織り交ぜるクレバーさで、強力打線に130キロ弱の直球を捉えさせなかった。

【絶体絶命のピンチ】

 試合は英数学館の1点リードで、9回に突入した。"大金星"が近づくなか、黒田は反撃を覚悟していた。

「強豪との対戦で、9回がすんなり終わることはない。絶対にもつれると覚悟していました。東海大相模のコーチ時代、リードされている横浜がすんなり負けてくれることはなかった。必ず食い下がってくる。必ず粘るからこそ強豪だと、何度となく見せられましたから。広陵もこのままでは終わらないはずだと」

 黒田の予想どおり、先頭から連打で無死二、三塁の大ピンチとなり、英数学館は2度目の守りのタイムを使った。

 黒田がベンチから、ムードメーカーの伝令役・俵将太をマウンドにできた輪に送り込む。間をとると同時に、俵に「どう守りたいか?」を確認させた。

「9回裏の攻撃は残っていましたけど、同点に追いつかれて、もう一度勝ち越すのは難しい。勝つなら、この1点を守りきるしかない。なので自分としては、二塁ランナーは関係なく、とにかく三塁ランナーを帰さない前進守備をしたい。選手たちが同じように思っているかどうかの確認でした」

 俵には、「前進守備なら腕で『○』を、同点覚悟で後ろを守るなら『×』をつくって」と伝えていた。だが、緊張した俵は黒田に向かって「前を守りたいって言ってます!」と絶叫。それから我に返り、あらためて腕で「○」と示した。

「『追いつかれた時点で、うちは負けなんだ』『三塁ランナーが生還した時点で勝ち目はない』と、自分と選手の考えが一致していた。この時、初めて『勝てるかもしれない』と思えました。俵が大声で言ったのはずっこけそうになりましたけど......(笑)」

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