花巻東・佐々木監督が『ドラゴン桜』作者に語った「なぜ岩手から次々に逸材が現れるのか?」の答え (2ページ目)
三田 私のなかでも、花巻東はいいチームだと思ったし、ここで満足してもらっては困るという気持ちもあって、あえて厳しく書かせてもらいました。
佐々木 期待していなければ、きつい言葉も書けないものですよね。きれいごとではなく、負けた現実をしっかりと指摘してくださる言葉に、私は刺激をもらいました。そして、私自身の意識と行動を高めてくださいました。だから、本当にうれしかったですね。私を黒沢尻北の後輩だと知ってくださっていることもうれしかったですし、あの時は「先輩の愛情」を感じました(笑)。
── その流れのなかにあった2009年の出会いだったんですね。
佐々木 でもじつは......そのはるか前に私は『クロカン』という漫画を通じて、すでに三田先生と出会っていました。実際に顔を合わせたわけではないのですが、私が大学生の時に三田先生の漫画に出会った。同じ大学に通っていた黒沢尻北の先輩が「黒北のグラウンドがモデルとなって描かれている」と言いながら、『クロカン』を薦めてくれたのがきっかけです。
三田 その話は初めて聞きました。
佐々木 それまでほとんど漫画を読んだことがなかったのですが、その世界観にどんどんと惹き込まれていきました。劇的に人生が変わる時には出会いがあるものだとよく言われますが、まさに私が指導者になるひとつのきっかけとなったのが、高校野球の監督が主人公として描かれていた『クロカン』でした。当時は選手を題材にした野球漫画はありましたが、監督を主人公にした漫画はなかったので、私にとっては相当に衝撃的でした。
三田 僕にとって、高校野球を題材にした初めての漫画が『クロカン』。作品のベースになっているのが、岩手です。県立の進学校で甲子園に行ったことがない高校を設定したのですが、そのモデルがまさに母校である黒沢尻北でして(笑)。そこが出発点でした。連載前は、実際にプレーしない監督はベンチに座っているだけでしょ? とおっしゃる方もいました。でも、高校野球を見ていれば、ゲームをコントロールしているのは監督であり、その司令塔を描いたほうが面白いんじゃないかというのが発想の原点にありました。
佐々木 たとえば、ノックがうまいチームは選手が育つ。そんな指導のヒントが散りばめられていた『クロカン』からは、多くのことを学ばせてもらいました。
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