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固定概念にとらわれない智辯和歌山の「中谷流改革」。今夏、日本一で再び黄金期の予感 (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo yoshiyuki

 3回戦の高松商(香川)戦では9回二死からストレートにこだわり、2失点して降板した中西に厳しい言葉をかけた。

「『何を自分のためにやってるんだ』と言われました。自分のために野球をするのではなくて、チームが勝つために投げるのがエースの仕事。監督に言われて再認識したことで、それ以降は感情のコントロールができたのかなと思います」(中西)

 決勝の智辯学園戦では思うような投球ができない先発の伊藤大稀を見て、捕手の渡部海にアドバイスを送った。

「伊藤さんがあまり攻めていけなかった。(伊藤の)持ち味は真っすぐ。『もっと真っすぐで押していけ』と言われました」(渡部)

 昨年の冬には、年内最後の練習試合が終わった11月23日から年末までの約1カ月間、自主練習の期間を設けた。

「野球の練習というのはメニューが決まっていて、全体でやることが多くて、受け身というか、指示を待つという感覚が多い。でもプロに行った時、そうでない時間が多かった」

 中谷監督はその時間に一心不乱にバットを振ったり、トレーニングをしたりということができず、楽なほうに逃げてしまったのだという。その反省から、選手たちには同じ失敗をしてほしくないという思いで、あえて自分たちで考えさせる時間をつくったのだ。

「大学、社会人、プロに進むと、自分で選択して、決める時間が多くなってくる。『好きな練習していいよ』と言われた時に動けない選手、自分のやりたい練習がわからない選手では困る。次のステージに行ってから経験すればいいことかもしれないですけど、高校時代にそうしたことをやっておくのは絶対に役立つことだと思う。自分で考え、正しいと思う行動を選択し、振り返って修正していく作業を繰り返すことで自立と成長につながると思います」

 2018年秋に監督に就任し、わずか3年。固定観念や慣習にとらわれず、自分でいいと思ったことを取り入れる"中谷流改革"を進めた結果が、早くも日本一に結びついた。

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