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「怪物中学生」と呼ばれた高知・森木、甲子園へのラストチャンス。今夏の仕上がりにスカウトは「すごくいい」 (2ページ目)

  • 寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori
  • Photo by Terashita Tomonori

 その後、高知中は広島県で行なわれた第40回全国中学軟式野球大会を制し、中学軟式春夏連覇を達成。決勝戦で仙台育英学園秀光中の伊藤樹(現:仙台育英高3年)と投げ合った延長11回タイブレークを制した。そして森木は「超大物ルーキー」の称号と共に、2019年4月、高校野球に挑むことになった。

 しかし......。高知高入学後の森木は「中学野球界の怪物」「150キロ」という、称号や数字の呪縛と闘う日々にさいなまれることになる。

2018年8月、四国中学校体育大会決勝戦。森木は150キロをマークした2018年8月、四国中学校体育大会決勝戦。森木は150キロをマークしたこの記事に関連する写真を見る【「プレッシャー」「ケガ」「コロナ禍」困難な高校の日々】

「硬式野球のボールは軟式に比べて滑る感覚がある。やはり対応は難しかったです」(森木)

 中学3年の秋、高知高の練習に参加し、硬式ボールを握り続けた森木はそう話した。濵口監督が「彼は本来、器用なタイプではない。積み上げて形にしていくタイプ」と説明するように、高校野球への対応には時間を要した。

 その中でも、高校入学後、4月の練習試合初登板で144キロ、1年夏の高知大会で148キロを連発し超高校級の矜持を示した森木。とはいえ、「中学軟式で150キロ」が脳裏に刻まれている周囲の期待値は、彼の当時のスペックを超えるものだった。

 中学で150キロを出したのなら、高校では155キロ・160キロもすぐに出るはずだし、甲子園も行けるはずーー。

 そんな高い期待の代償は1年夏の高知大会決勝戦で名将・馬淵史郎率いる明徳義塾に敗れた後、右肘の違和感になって現われた。幸いにも早めのMRI検査により、「じん帯に線が入る一歩手前」で登板を回避できたが、秋のマウンド登板はまさかのコールド負けに終わった県大会準々決勝・高知中央戦での1アウトのみに終わった。

 右肘を回復させ、冬のトレーニングで満を持して臨んだ2020年。今度は「コロナ禍」が襲う。夏の甲子園は中止。独自大会もオール3年生で臨むチーム方針により、2年の森木は登録なし。県大会決勝戦・明徳義塾戦で自己最速を超える151キロも出し万全の状態で臨んだはずの2年秋は、地元四国大会初戦・高松商戦で「ストレートしか頼れるボールがなくなって」(森木)と弱点が露呈し、11安打5失点5四球の乱調。「甲子園へ残されたチャンスはあと2回のみ」のプレッシャーが彼の心身のバランスを微妙に狂わせたのは想像に難くない。

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