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元ドラ1「未完の剛球王」が
独立リーグで復活。メジャーへの扉を叩く (3ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Asa Satoshi

 それでも北方は、自身が"イップス"であることを認めていない。

「練習ではちゃんと投げられますから。問題は(試合の)マウンドですね。僕のなかではイップスというより、フォームを乱したというほうが正しいのかと思っています。指先の感覚はあったので......。ただフォームが崩れて、同じところでボールをリリースできないという感じでした。でも自信はありました」

 それでも結果は出なかった。昨年のシーズン終了後、信濃から提示されたのは無給の練習生契約だった。北方は移籍を決めた。

「愛媛で野手転向を勧められたのですが、ピッチャーをしたかったので信濃に移ったんです。結局、そこでも練習生だと言われ、移籍することにしました。(年齢的に)僕には時間がないので。今年のシーズン前半で結果を出して、スカウトに見てもらわなきゃと思っていたので......」

 昨シーズンに記録した159キロのストレートが、北方から「あきらめる」という選択肢を奪っていた。結果は出ていなかったが、独立リーグでの経験は北方に自信を取り戻させた。

 栃木への移籍が決定すると、球団の施設を使いオフ返上でトレーニングを続けた。とくに特別なことをしたわけではなかったが、トレーナーと相談しながらトレーニングを継続することによって、北方の自信は確固たるものになっていった。

「正月だけは5日ほど田舎に帰りましたが、あとはずっとトレーニングを続けていました。とにかくサボらずにやろうと。シーズンに入ってから後悔したくなかったので」

 細かな制球力など必要なかった。独立リーグという場において、150キロ台後半のストレートがあれば、十分に打者を牛耳ることができた。首脳陣も迷わず北方をリリーフとして マウンドに送った。信頼されているという自信は、いつしか北方からストライクゾーンという恐怖をかき消していた。

「もうマウンドでなにも気にならないです。ファウルを打たせたり、逆にストライクゾーンを広く使えているので」

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