2019.05.14

元ドラ1「未完の剛球王」が
独立リーグで復活。メジャーへの扉を叩く

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Asa Satoshi

 もうずいぶん前の話になるが、2012年の年の瀬に野球ライターが集まる忘年会があり、そこでひとつのサインボールをいただいた。そのサインボールにはわかりやすい楷書体で「北方悠誠」と記されていた。

 北方悠誠(ゆうじょう)は、唐津商業(佐賀)からその年のドラフト1位で横浜DeNAから指名を受け入団。150キロを超える速球は将来を嘱望されたが、コントロールに苦しみ、わずか3年で退団。その後、合同トライアウトを受けソフトバンクに育成選手として契約を果たすも、制球難は解消されず、結局、1シーズンで戦力外となった。

ドジャースとマイナー契約を交わしたBCリーグ栃木の北方悠誠 2016年からは独立リーグの世界に飛び込んだものの、ここでも確固たる結果を残せず、チームを転々とし、この春は独立リーグで4チーム目となるルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスで開幕を迎えた。

 ドラフト1位――プロ入りした時の北方には、すばらしい未来予想図が広がっていたはずだ。均整のとれた体躯から繰り出される剛球は、誰の目にも魅力的に映り、クローザー候補に名前が挙がったこともある。しかし、DeNAでの3年間で一軍登板なしに終わると、20歳の若さで自由契約を言い渡される。

「正直、プロで活躍できると思っていました。けれど実際に入ってみたら、右も左もわからなかったですし、慣れるのに時間がかかりました。結局、実力不足、技術不足だったんです」

 北方はそう言うが、ドラフト1位で指名された逸材である。少なくとも入団時は、プロでやっていくだけの実力はあっただろうし、近い将来、一軍での活躍を期待されていたはずである。

「たしかに、その時はプロの水準をクリアしていたのかもしれませんが、どんどん調子を悪くしてしまいました」

“高卒のドラ1投手”と聞いてまず名前が挙がるのは、松坂大輔(中日)、ダルビッシュ有(カブス)、田中将大(ヤンキース)、菊池雄星(マリナーズ)、大谷翔平(エンゼルス)といったところか。いずれも日本球界で伝説を残し、メジャーへと旅立った。