二浪→BC。ドラフト候補・安河内駿介は速球とつぶやきで存在感を放つ (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

「速い球を投げるコツをつかんだんです。下半身は後ろ(二塁側)に、上半身は前(捕手側)に向かうようにすると、自然と体がピョンッと跳ねてスピードが上がる。作用反作用の法則ですね」

 ところが、疲労がたまった夏場に調子を落とし、最終的に残った成績は38試合に登板して1勝0敗6セーブ、防御率2.37。38イニングを投げて42奪三振を記録したが、本人は「ひどいっすよね」と吐き捨てる。

「『圧倒』なんて言っておいて、無様ですよね。想像以上にバス移動や夏場の暑さで疲労がたまってしまいました。水風呂で疲れを取る方法を編み出して、最後の数試合は調子が戻ったんですけど」

 9月20日にはBCリーグ選抜の一員として、ヤクルト戸田球場で行なわれたヤクルト二軍との交流戦に登板した。プロ3年目のホープ・廣岡大志から103キロのカーブで見逃し三振を奪うなど、1イニングを三者凡退。だが、この日の球速は最速144キロにとどまった。

「変化球が入ってよかったですけど、今日はストレートが全然ダメでした。スカウトの方も物足りないと思ったはずですよ。本当はもっと真っすぐで押したかったんです。二軍でも将来有望な選手と対戦することはわかっていたので、『当たんねぇだろ!』って思い知らせたかった......」

 安河内はそう言って、唇をかんだ。今年で大卒3年目。すでにNPBを飛び越え、メジャーリーグへと羽ばたいた大谷翔平よりも1学年上になる。なぜ、そこまでしてNPBを目指すのか。そう問うと、安河内はいたずらっ子のように「お金がいっぱいもらえるから」と笑ってから、こう続けた。

「小さい頃はそう思っていました。でも今は、純粋にもっといい真っすぐを投げたい。もっといい変化球を投げたい。もっと抑えたいし、刺激的な対戦をしたい。僕は刺激のある生活がすごく楽しいんです。それが今の生きがいになっていますね」

 投げるセルフプロデューサー・安河内駿介。その野心的なピッチングをNPBの大舞台でも見てみたい。

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