2018.09.30

阪神・鳥谷ら名手と同じグラブになる!
「究極のメンテナンス」とは?

  • 井上幸太●文・撮影 text & photo by Inoue Kota

【連載】道具作りで球児を支える男たち 湯もみ型付け(4)センナリスポーツ

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 一風変わった細長い形状の店内に、ところせましとグラブが並ぶ。「ここ、昔は定食屋だったんですよ」。人懐こい笑顔、軽妙な語り口で繰り広げられる”関西流”のトークが心地よく耳に響く。

「野球の上達に一番適しているグラブが、湯もみ型付けを施した久保田スラッガーなんです」

 こう力説するのが、大阪市生野区にある「センナリスポーツ」で湯もみ型付けを始めとした加工を担当している荻野優二郎(おぎの・ゆうじろう)だ。

独立リーグでのプレー経験がある荻野氏 荻野は「元・独立リーガー」という肩書きを持つ。上宮高、阪南大を経て、2007年から、四国・九州アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグplus)の愛媛マンダリンパイレーツ、長崎セインツ(2010年に解散)で計2年間の現役生活を送った。当時はチェンジアップを武器とする左腕投手として活躍した。

 引退後は、父親が店長を務めるスポーツ店を継ぐべくスタッフ入り。かねてから久保田スラッガーを取り扱っていたこともあり、福岡支店での研修の話が舞い込んできた。

「スラッガーさんの実店舗で型付けはもちろん、接客の基礎も学ばせていただきました。この研修で得たものが今でも自分のベースになっていますね」

 荻野は2009年に6カ月間、福岡支店の研修スタッフとして過ごした。研修としては異例の長さで「半年間も研修させてもらったのは、後にも先にも僕だけじゃないですかね」と振り返る。

「どうせ行くのなら、徹底的にやりたいと思っていました。幸い、親父からも『とことん勉強させてもらえ』と送り出してもらっていたので、少しでも多くのものを吸収して大阪に帰りたかった。研修期間はアパートを借りて生活するので、家賃などの生活費を自己負担する形になります。それでも、自分が納得するまで勉強したかったんです」

 冒頭で述べたように、現役時代は左腕投手だった荻野。しかしながら、購入されるグラブの多くは右投げ用で、しかも久保田スラッガーは内野手用が売れ筋だ。

「自分自身が左投げで、現役時代に内野をやったことはほとんどない。ピッチャー用のグラブだと、ウェブ(グラブの親指と人差し指の間にある網のパーツ)の下付近で捕ることが多いんですが、内野手用はグラブの中心、もっと言えば手の平に近いところで捕球します。右投げの捕球について”真っさら”な状態だったのが、逆によかったと思いますね。『コレ!』というイメージを持っていたら、軌道修正に時間がかかっていたと思うので」