2018.10.04

公式戦0勝のドラフト1位候補。
メジャースカウトも絶賛のポテンシャル

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「君ならプロ野球選手になれるよ」

 まだ160センチにも満たなかった小学6年の梅津晃大に声をかけたのは、仙台育英秀光中等教育学校で監督を務めていた須江航(すえ・わたる)だった。今年から仙台育英高校の監督に就任している須江が、当時の印象を振り返る。

「こんなきれいな投げ方する子はいないと思いました。親御さんも大きかったですし、体さえ大きくなれば、大卒でプロに行けると思いました」

 それから10年の月日が経ち、小さかった野球少年はその見込み通り、恵まれた体格と「ドラフト1位候補」の称号を得た。

150キロを超すストレートと多彩な変化球が持ち味の東洋大・梅津晃大 身長187センチ体重90キロの恵まれた体格から最速153キロのストレートを投げ込む。変化球もキレ味鋭い縦横2種類スライダーに、140キロ前後のフォーク、ブレーキの効いたカーブなどを持ち、とりわけ制球で苦しむこともない。

スカウト陣からは「まだまだこんなもんじゃない」「アメリカ(MLB)に行けるのは梅津」と、その好素材に賛辞の言葉が並ぶ。

 しかし、まだ手に入れることができていないものがある。それが公式戦での白星だ。梅津はその高い評価と不釣合いな現実と戦っている。

 好素材であるのは間違いないが、これまで華やかな経歴を辿ってきたわけではない。中学時代に身長が約20センチ伸びたが、エースにはなれず。

 仙台育英高校では2年秋からエースナンバーを背負うも、結果を残せず。3年の6月には死球で左手首を骨折。最後の夏にはなんとか間に合ったが、4回戦の東北学院高校戦に先発し、5回を6安打3失点で降板し、チームはその後敗戦。12年ぶりに8強進出を逃したことで厳しい声も耳に入り、「全部が否定された気持ちになりました」と梅津は振り返る。

 一方で「だからこそ東洋大に入ることを決めました」と語る。かつては、仙台育英のOBも在籍していたが、そのなかに退部した選手がおり、ルートは途絶えていた。当時の佐々木順一郎監督(現・学法石川高校監督)からも最初は心配されていた。