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早実・清宮の夏を終わらせた八王子「100キロのストレート」 (6ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 9回になると「疲れが出て、球場の雰囲気にのまれてしまった」という早乙女は、無死から連打を浴びて交代。2番手に背番号12の右腕・米原大地 (2年)が登板した。1アウトを取って、一死一、三塁の場面で迎えたのが、この日5打席目となる清宮だった。安藤監督はマウンドに向けて伝令を送る。

「(勝負するか)どうするかはお前らで決めろ。でも、もし勝負するなら、中(インコース)に行け」

 マウンドに内野陣が集まるなか、「勝負しよう」と言ったのは捕手の細野だった。「続く野村も怖いし、うまくはまれば抑えられるはず」という思いもあった。

  そして初球。インコースに構えたストレートが、少し高く入ってきた。清宮のバットが一閃する。その瞬間、ベンチにいた安藤監督は「『行った』と思った」と いう。だが、打球は高々とライト方向に上がると、逆風に戻されてフェンス手前でライトの保條友義のグラブに収まった。犠牲フライにはなったものの、依然4対6と2点差。続く野村がサードゴロに倒れ、早実の夏は終わった。

 清宮は試合後、「最後の打席で打てなかったので、まだまだです」と敗戦の弁を述べた。一方、勝利した八王子の安藤監督は言う。

「去年の夏は早実に負けましたけど、個々の力は去年のチームの方が上です。でも、今年は個々の力はなくてもチーム力を高めて、戦うことができました」

  八王子は西東京大会で2回の準優勝経験があるが、甲子園出場はまだない。そもそも、八王子市から甲子園に出場した高校すらないのだ。「日本一注目されてい るチーム」と言っても過言でない早実を破り、悲願成就まであと2勝。勝敗の行方を握っているのは、やはり早乙女の「5割のストレート」なのかもしれない。

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