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早実・清宮の夏を終わらせた八王子「100キロのストレート」 (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 中盤以降、八王子の早乙女は100キロに満たないスローカーブの割合を増やし、早実打線を緩急で翻弄した。そしてスローカーブとは別に、見ていて不思議に感じるボールがあった。球速は100キロほどで、早実の打者たちが何とも手応えのなさそうな風情で打ち取られている。細野にこの球種はチェンジ アップかと問うと、意外な答えが返ってきた。

「いえ、ストレートです。普通のストレートを5割くらいの力で投げているんです」

 なんと、速いボールでも120キロ台がほとんどの早乙女は、あえてそれよりも遅いストレートを投げ込んでいたのだ。清宮の4打席目は、このボールでセカンドフライに打ち取っている。この「5割のストレート」は安藤監督の発案だという。

「去年の代に横森拓也(拓殖大)という力のある投手がいたのですが、横森に『ストレートでも緩急をつけることが大事だから、試しに5割くらいの力で投げてみろ』と勧めてみたんです。練習試合で試してみると、意外と打たれない。これを早乙女たちも見ていたので、5割の力で投げるストレートが定着していきました。早実打線を抑えるには、インコースに緩い球、高めの速い球で勝負する必要があると思っていたので、このボールがはまったのでしょう」

 何の変哲もないボールに見える。だが、厳しいコースを攻められるなかで、突如遅いストレートが来たら、打者は戸惑うものだ。それも、早乙女のコントロールがいいからこそ、成立する投球術。早乙女は味方の援護も受けて、8回まで早実打線を3失点に抑え、最終回を迎えた。

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