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2浪の強打者も。4季ぶり優勝に迫る慶応大「浪人組」の底力 (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshitomo

 岩見もまた、AO入試で慶大を受験することを決意したが、出願までの時間がほとんどなかった。ほぼ準備なしで受験したものの、書類選考の時点で不合格。9月の2回目の募集でも不合格となり、岩見は浪人することを決意する。

 だが、高校の教師たちは猛反対した。「本気で言っているのか?」「無理だろう?」……両親、教師ら10人ほどの大人が岩見のために集まり、進路について話し合った。なぜ、これほどの説得を受けたかというと、岩見が近畿圏の2つの大学に一般入試で合格していたからだ。しかし、岩見の「慶応」への思いは揺らがなかった。

「もし浪人して、慶応に受かって5年後にプロに入れなかったとしても後悔はない。でも他大学に行って『あのとき浪人していれば……』という後悔が生まれる可能性はあると思ったんです。浪人して落ちてもいい。その時は野球をやめよう。そういう野球人生だと思っていました」

 1浪してAO入試を受験する者はほとんどいないそうだが、岩見の再チャレンジは無事合格。「地域政策」をテーマに書いた自身の小論文を一言一句暗記し、事前に何度も練習して臨んだ面接でも普段通りの姿を見せることができた。

「猛反対されて迷惑もかけましたけど、なかには『大丈夫だよ』と言ってくれた先生もいて、合格できてよかったです」

 浪人生が野球部に入る場合、同期生が年下になり、先輩が同い年になることもある。上下関係はどうなるのか気になるところだが、慶大の場合は、同期は同期。たとえ年下だろうと同期は「タメ口」であり、先輩には敬語を使う。これは倉田も岩見も「違和感はなかった」と口を揃えた。

 浪人生が抱える野球への長いブランクという課題も、大久保監督は「2年かけて体力を戻し、作ると思えば、チャンスは短いかもしれないが決して遠回りではない」と言う。事実、倉田も岩見も大学3年目の今季にレギュラーになった。

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