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2浪の強打者も。4季ぶり優勝に迫る慶応大「浪人組」の底力 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshitomo

 一方、岩見雅紀は比叡山高時代に通算47本塁打を放ったスラッガーだった。

 今でこそ「東京に来てみて、意外とみんな打っていないんだなと知りました」と振り返る岩見だが、当時は自分が特別な選手だとは思っていなかった。幼い頃から消防士を夢見ており、大学で野球を続ける意思すらなかったという。

 だが、高校3年夏の大会が終わって間もないある日。岩見は「急に野球を続けたくなってしまった」という。甲子園には出られなかった。これまで野球をしていて、何も果たさぬまま終わるのは嫌だ……。そんな思いが芽生えてきた。そして野球部の監督にこう告げる。「関東の大学に行きたいです」と。

 当初は「無理だ」と突っぱねた監督も、諦めずに自ら進学先を探して奔走する岩見の姿を見て、こんな選択肢を提示してきた。

「慶應にAO入試という制度があるぞ」

 もしかしたら、監督は自分を諦めさせるためにそう言ったのかもしれない。今にして岩見はそう感じている。だが、当時の岩見にとって「慶応」という選択肢は、閉じかけていた自身の野球人生に差し込んだ、一筋の光だった。

「もし慶応でやれるのなら、プロを目指そう。そう思ったんです。今まで自分のなかで、野球に対して抑えていた気持ちもあったのかもしれません」

 AO(アドミッションズ・オフィス)入試とは、大学側が求める学生像に合っているか、出願者の個性や適性を多面的に評価する入試制度のこと。「スポーツ推薦」の制度がない慶大だが、甲子園で活躍した選手などはこのAO入試によって慶大の湘南藤沢キャンパス(総合政策学部、環境情報学部)に合格するケースが目立つ。AO入試は書類選考と面接によって合否が判断されるが、小論文を書くための高い著述能力が求められる。たとえ高校時代に野球で実績を残していても不合格になることも多い。

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