2浪の強打者も。4季ぶり優勝に迫る慶応大「浪人組」の底力 (6ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshitomo

「慶応ボーイ」という言葉があるように、慶大といえばスマートで洗練されたイメージがある。それは野球にも感じることがあるのだが、今年の慶大は泥臭さ、ガムシャラさを感じる。それは大久保監督が目指す方向だという。

「僕がいた頃の慶応は、明治や法政のように甲子園組の多い『プロ予備軍』に対して、いかに勝つかを考えてユニフォームを泥んこにしながら練習していました。その雰囲気を取り戻したいんです。今の慶応はソツのない『うまい選手』は増えています。でも、1球に懸ける思い、ひとつのプレーへの思い、リーグ戦への思いを持っている選手がどれだけいるか。見ている人にも『慶応、ちょっと変わったな』と思ってもらえるようなチームにしたいんです」

 浪人したことは、遠回りだったのか? 最後に倉田と岩見に聞いてみた。

 倉田は「現役で受かっていれば、体力も落ちずにプレーできたのかなと思うこともありますけど、でも今の自分があるのはやはり浪人を経験したからだと思います」と言った。そして岩見は「絶対に浪人してよかったです」と前置きして、こう続けた。

「だって、タイプのダブる横尾さん(俊建/現・日本ハム)と谷田さん(成吾/現・JX-ENEOS)と2年ズレましたから。試合に出るチャンスが2年あるのは大きいです」

 そう言って、岩見は不敵な笑みを漏らした。浪人生のたくましさを見た思いがした。

6 / 6

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る