プロ野球12球団の変遷が映し出す日本経済。起業家が育たないのはなぜか (4ページ目)
起業家が育たない国、日本
奥野「鈴木君の言うことは、結構、的を射ているかもしれないね。確かに電車に乗っていても、昔は皆、新聞を広げて読んでいたのが、今はスマホだからね。レガシーメディアと言われているなかでも、新聞は特に厳しいかもしれない。球団を運営している余裕も、どんどん削られていくかもしれないね。
ここから少し経済の話をしたいんだけど、この国は30年前の企業の時価総額が世界で一番大きかったりするんだ。だけど、企業の新陳代謝が起こらなくて、アントレプレナー(起業家)がなかなか育たない国でもある。
では、なぜ日本ではアントレプレナーが育たないのだろう。
もちろん、日本でもそこそこの成功を収めた起業家は存在するのだけれども、しょせんは井の中の蛙で、その成功は日本国内でしか通用しない。Amazonやgoogleのように世界を席巻してしまうレベルの会社が、全くといっていいくらい出てこない。
アントレプレナーが育たない理由については、お金を出す人がいないからだと思っている人が意外と多くて、『ベンチャーキャピタルがリスクを取らないからダメなんだ』とか、『機関投資家がしっかりしないといけない』といった批判の声もあるようなんだけど、金融業界で働いている知人に言わせると、『そうじゃない。お金は儲かるところに自然と流れていくものなので、無理やりお金のパイプを太くしても、アントレプレナーは育たない』ということなんだ。
つまり、お金以外のところでアントレプレナーが育つ環境を整える必要があるんだ。そのためには、旧態依然とした企業がずっと居座われるような、新陳代謝が起こりにくい企業環境を変えなければならない。そんなことを、プロ野球チームの変遷を見て実感したね」
【profile】
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。
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