松田丈志が語る「北島康介さんから教えられたこと」 (6ページ目)
「ロンドン五輪後は日本の平泳ぎのレベルが落ちていたから、康介さん自身、「俺もまだ行けるかも」と思っていたのではないでしょうか。あの人はすごく純粋なところがあるから。ただ単純にもう1回、五輪に行きたくて、結果どうこうというよりも、『まだ戦いの場にいたかった』という気持ちもあったでしょうね。
そんな康介さんを見て、次の世代の選手たちが受け継いでいかなければならないのは、『世界で戦う楽しさを味わうこと』だと思います。それをしっかり自分で味わって結果を出せば、喜びや感動があるし、1回味わえば絶対、『またそれを味わいたい!」といういいサイクルに入っていく。僕自身は個人では金まで届かなかったし、悔しさもあったけど、銀と銅を獲って喜びも感動もあり、すごく貴重な経験をした。だから若い人たちはまず、『世界で戦う楽しさを味わうこと』を経験しなければいけない。
康介さんは五輪で金メダルを獲るとか、世界記録を出すことを、"日本人でもできること"にしてくれた。だから僕らも、金メダルを目指したし、世界記録を出したいと本気で思えた。そうやって戦い続ける姿をみんなに見せてくれたのだから、それを無駄にしてはいけないと思います」
photo by Koreeda Ukyo【profile】
松田丈志(まつだ・たけし)
1984年6月23日生まれ、宮崎県出身。セガサミーホールディングス所属。4歳のときに地元・東海(とうみ)スイミングクラブで水泳を始め、久世久美子コーチの指導で頭角を現し、2004年のアネテ五輪に出場。練習環境に注目が集まり、「ビニールハウス生まれのヒーロー」と称される。北京五輪では200mバタフライで銅メダルを獲得し、ロンドン五輪では200mバタフライで銅、400mメドレーリレーで銀メダルを獲得。184cm・80kg。
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