松田丈志が語る「北島康介さんから教えられたこと」
松田丈志インタビュー@後編
今年4月の日本選手権でリオデジャネイロ五輪の日本代表メンバー入りを逃し、現役引退を表明した北島康介。松田丈志が初めて日本代表入りした2002年のアジア大会のとき、2歳年上の北島はすでにエースとして君臨していた。松田にとって北島は、常に追いかけるべき存在であり続けた。その姿を、松田はどう見ていたのか――。
引退を表明した北島康介について語る松田丈志「僕が康介さんを見て衝撃的だったのは、2002年のアジア大会で世界記録を出したときでした。その年の康介さんは、8月のパンパシフィック選手権でひじを痛めて棄権し、アジア大会に向けての直前合宿でもほとんど練習できていなかった。逆に僕は、死ぬほど泳いで臨んだので、『それでも世界新を出しちゃうんだ。すげえ!』と思いました。その意味では、持っているモノの大きさに衝撃を受けました。
僕の初めての世界大会だったアテネ五輪のときもそうでしたが、康介さんは100%の状態じゃなくても勝つというすごさがあります。そう思って振り返ってみると、ロンドンの僕の200mバタフライ(銅メダル)や、入江陵介の200m背泳ぎ(銀メダル)は、まずこちらが100%を出さないとチャンスはなく、その上で相手が1%でも2%でも失敗してくれたら、やっと金メダルが見えてくるという勝負だった。でも康介さんは、アテネでは100%の状態でなくても、ふたつの金メダル(100m・200m平泳ぎ)を獲ったんです」
1 / 6