【大学駅伝の注目校】「エース躍進」「強力新入生」「練習改革」の手応え 創価大が描く箱根への成長曲線 (2ページ目)
【箱根の目標は、学内区間記録を合計したタイムの更新】
主力が結果を出し、今季のチームは順調に来ているように見える。ただ、榎木監督は、「主力はよいですが......」と前置きして、こう語る。
「主力に続く中間層、特に2、3年ですね。ここがしっかり上がってこないといけないですし、ハーフで山口クラスの走りができる選手が3人くらい出てきてくれないと、箱根では戦えないと思っています」
榎木監督の言葉通り、主力以外に目を向けると少々不安が残る。
「2、3年生はこのままではいけないという危機感を持っているでしょう。(箱根で走る距離に近い)ハーフはまだ1年生が経験していない領域なので、そこで優位に立とうという話を2年生以上には言っていて、その部分では力を多少は見せてくれているのですが、レベル的にはまだまだかなと思います」
主力を支える中間層は、創価大にとって長年の課題だ。昨季は「神6(シックス)」こと出雲駅伝で3位を達成したメンバー6人以外がもうひとつ伸びてこなかった。今季に関しても、エースの小池は「チーム全体を考えると、まだ力が足りない」と言う。
「(5000m)13分台の1年生が6名入ってきて、下級生が下からグッと押し上げてくれるようなチームになっていくと思いますが、その反面、上級生がもっと元気を出していかないと、青山学院大や國學院大、駒澤大、早稲田大、中央大にはかなわないと思います。
(それと同時に)大きな舞台で自分が勝たないと『創価大、強いな』って言ってくれないでしょうし、メディアの取材もほかに行ってしまう。僕を含めて上級生は出たレースではしっかり勝っていかないといけない」
そう小池は危機感を口にするが、榎木監督はそこまで悲観していない。
「ここまでチームとしてはすごくいい練習ができています。これから伸びてくる選手も多くいると思いますので、夏からが勝負ですね」
榎木監督が言う「いい練習」とは、創価大の新たな取り組みのことだ。従来はレベル別に3チームに分かれ、それぞれ担当のコーチがついて練習を行なっていた。だが、今季は13分台の1年生が6名入ったことを受け、トラックの5000mで13分40秒を目指す川嶋伸次総監督グループと、毎月コンスタントにハーフを走るロード組の榎木監督グループのふたつに分けたのだ。
川嶋総監督グループには、すでに13分40秒をクリアしている小池のほか、織橋巧(4年)、齊藤大空(4年)、ルーキーの村上ら13分台の選手のほとんどが属している。一方の榎木監督グループには、山口、衣川勇太(2年)、榎木凜太朗(3年)ら約20名がいる。そのほかに山専門と育成の15名ほどを久保田満ヘッドコーチと築舘陽介コーチが指導している。
「高速化する箱根駅伝に対応するには、5000mは13分40秒台、10000mは28分30秒台の選手を揃える必要があります。トラック組は夏までに40秒台を出すことに重点を置き、絶対的なスピードを上げることに取り組んでいます。ロード組はハーフで1時間02分台を安定して出し、(勝負)レースで1時間00~01分台を出せる力をつけることを目標にしています。それぞれが得意なところでしっかりと力をつけ、それを秋の駅伝シーズンに結集して戦えるチームにしていきたいと思っています」
今季の創価大の目標は、例年と少し異なる。昨年は青学大、駒大、國學院大、早大、中大の「5強」に割って入るトップ3を掲げていたが、今季は矢印を他校ではなく、自分たちに向けた。
「三大駅伝は、今まで3位以内という順位を目標にしてきたのですが、今季の箱根駅伝については、過去に創価大のOBが出してきた(学内)区間記録の合計タイムである10時間42分02秒を超えることを目標にしています。それでも前回大会(優勝した青学大は10時間37分34秒)に当てはめると3位相当なので、優勝はまだ遠いのですが、まずは身近なところをクリアしていこうということで、10区間の学内記録をすべて上回っていく。そうして、青学大に少しでも迫れるようにしていきたいですね」
創価大は、一昨年に卒業した吉田響(現サンベルクス)の代から、選手の意識のベクトルが大きく変わった。
上位校に負けたくないという気持ちに火がつき、そこそこ戦えることに満足せず、より上を目指すようになった。榎木監督もチームの発信力を高め、成長できる環境をつねに考えてきた。とはいえ、生半可な覚悟では歴代の学内区間記録を更新することも、その先にある高みにも届かない。果たして今季、史上最強のチームを作り上げることができるか。
創価大は野心をたぎらせている。
著者プロフィール
佐藤俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。
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