【箱根駅伝2026】渡辺康幸が分析する青山学院大の圧倒的強さの礎と黒田朝日の「5区・衝撃走」とランナーとして凄み (4ページ目)
【勝つためのサイクルが確立している青学大メソッド】
復路も見事でした。6区の石川浩輝選手(1年)は野村昭夢選手(現・住友電工)が保持している区間記録と同等のタイムで走れる目処が立っていたとのことで、想定は57分20秒。結果はそれを5秒上回る記録でしたから、期待どおりの走りだったと思います。1年生の起用は往路復路問わず難しい判断になりますが、山上り候補だった1年生を起用しなかった点も含め、そのあたりは原監督の長年の勘が働いたのでしょう。
7区以降も文句なしでした。復路スタート前の芦ノ湖で原監督とお話しした時、「(今回走らなかった)中村海斗、鳥井健太(共に3年)もいい状態なので、何があっても心配はしていない」とかなり自信を持って話されていたので、その言葉を聞いてピクニックラン(後続に差をつけた状態での単独走)になるのかと感じました。
結果として、これまでの青学大の勝ちパターンが再現されたわけですが、本来、往路優勝したチームが、そのまま復路でも崩れずに走りきるのは簡単なことではありません。特に今回の青学大は、往路に比べて経験値の高い選手ばかりというわけではなかった。それでも大きな乱れがなかったのは、チームとしての設計図が明確だったからだと思います。区間ごとに「攻める」「耐える」というラインがはっきりしており、選手たちもそれを理解したうえで走った。このあたりに、原監督の経験とチーム全体の成熟度を感じました。
青学大は、入学後に選手を伸ばす仕組みを確立しています。その積み重ねが、今回の圧勝につながったのだと思います。
ここまでいろいろ振り返ってみて、毎年この時期に同じようなことを話していることが思い出されます。「来季の青学大は厳しい」「他校が有力だ」という予想を繰り返すなか、結果として青学大が勝っている。これがどれくらいすごいことなのか、あらためて感じています。
高校の有望な選手をかき集めれば、1回や2回くらいは勝てるかもしれません。ただ、長い目で見た時、特に青学大は1年生で無理に結果を求めず、2、3年目から花開いていけばいいという考えを実践できるサイクルが出来上がっています。だから、即戦力を毎年獲得する必要がない。入学後にしっかり育成し、それを10年近く継続できている点こそが、青学大の最大の強さでもあると思います。
後編につづく〉〉〉力は拮抗も打倒・青学大を果たせなかったライバル校) その差は?
⚫︎プロフィール
渡辺康幸(わたなべ・やすゆき)/1973年6月8日生まれ、千葉県出身。市立船橋高-早稲田大-エスビー食品。大学時代は箱根駅伝をはじめ学生三大駅伝、トラックのトップレベルのランナーとして活躍。大学4年時の1995年イェーテボリ世界選手権1万m出場、福岡ユニバーシアードでは10000mで優勝を果たし、実業団1年目の96年にはアトランタ五輪10000m代表に選ばれた。現役引退後、2004年に早大駅伝監督に就任すると、大迫傑が入学した10年度には史上3校目となる大学駅伝三冠を達成。15年4月からは住友電工陸上競技部監督を務める。学生駅伝のテレビ解説、箱根駅伝の中継車解説でもおなじみで、幅広い人脈を生かした情報力、わかりやすく的確な表現力に定評がある。
著者プロフィール
牧野 豊 (まきの・ゆたか)
1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。
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