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【箱根駅伝2026】渡辺康幸が分析する青山学院大の圧倒的強さの礎と黒田朝日の「5区・衝撃走」とランナーとして凄み (2ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Yutaka Makino

【黒田朝日の衝撃走とランナーとしての資質】

 その流れを、黒田選手がひっくり返しました。区間記録を1分55秒更新する1時間07分16秒は、そう簡単に破られる水準の記録ではありません。青学大は往路優勝を勝ち取り、想定よりもかなり早い段階でレースの主導権を自分たちのものにしてしまった。この時点で、青学大は"いつもの流れ"に持ち込むことができたのだと思います。圧巻というしかないでしょう。

 黒田朝日という選手の特異性は、やはり2区と5区という性質の異なる区間で、決定的な影響力を持てる点にあります。平成以降を振り返っても、2区と5区の両方で区間賞を獲った選手は、現在の中大・藤原正和監督以外いません。それだけに、長年指導に当たってきた原監督が、黒田選手を「作品」とまで評した理由も理解できます。

 そもそも2区と5区で求められる能力は大きく異なります。2区はスピードとレースマネジメント、5区は登坂適性と我慢強さが問われる区間です。本戦への準備の仕方も身体の使い方も違う。その両方で結果を出すことは至難です。その意味では、長距離界全体を見渡しても、何十年にひとり出てくるかどうかの存在だと言えるでしょう。逆に言えば、2区と5区で成功できる選手だからこそ、マラソンでも成功する。藤原監督の現役時代もそうでしたし、黒田選手も同じ道を歩もうとしています。

 決して、体格に恵まれているわけではありません。それでも10000mのスピードがあり、駅伝で安定して走れ、マラソンでも結果を出せる。トラックもロードも高いレベルで両立できる選手です。そして何より、期待やプレッシャーを力に変えられるメンタルの強さがある。それに故障がない。どんな状況でも冷静で性格も非常に安定していて、指導者から見ても手のかからないタイプだと思います。

 これだけのすごい選手ですから、どのチームに進んでも一定以上は伸びたでしょう。ただ、青学大のメソッドと黒田選手の資質が、これ以上ないほど噛み合った。その相乗効果が、今大会の走りにつながったと感じています。彼のマラソンの自己ベストは2時間06分05秒。原監督も話しているように、卒業後はマラソンでさらに高いレベルを突き詰めていくことになるでしょう。

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