【箱根駅伝2026】渡辺康幸が分析する青山学院大の圧倒的強さの礎と黒田朝日の「5区・衝撃走」とランナーとして凄み (3ページ目)
【4区・平松が「影のMVP」となる周到な区間配置】
青学大全体に目を向けると、区間配置の巧みさも際立っていました。多くの方々の予想、また指導者の一般的な考え方としては、黒田選手は2区に置くのがセオリーです。早い段階で主導権を握り、3区以降、優位にレースを進められる。青学大は3区でも無類の強さを発揮してきたので、そこで自分たちの流れに持ち込み、今回初めて5区、6区を走る選手に繋げていくという青写真になるのです。実際、エントリー発表前後のコメントや雰囲気も、周囲には「2区・黒田」を強く意識させるものでした。
しかし実際には、かなり早い段階から黒田選手の5区起用は決まっていたと聞いています。そして12月中旬には、その構想が確定した。2区起用を匂わせていたのは、結果的にはライバル校やメディアに対する駆け引きだったのでしょう。
私の推測ですが、エントリー16人が発表された12月10日以降、飯田翔大選手や小河原陽琉選手(共に2年)、宇多川瞬矢選手(4年)の仕上がりがよく、往路での起用に目処が立ったことで、その時点で黒田選手の5区が確定したのではないでしょうか。ただ、12月31日に1区を予定していた荒巻朋熙選手(4年)が胃腸炎になり、当初4区を予定していた小河原選手を1区に持っていき、出走予定のなかった平松享祐選手(3年)を4区に起用することになりました。
その平松選手が、初の箱根で今大会の「影のMVP」と言える快走を見せてくれました。12月31日に出走がないことを告げられ、ほとんど眠れないまま元日を迎え、突然、4区を走ることを伝えられた。普通ならうまくいきません。私自身、早大監督時代に同じような経験をしていますが、結果は出ませんでした。それだけに、この走りの価値は、現場を知る人間ほどよくわかるはずです。しかも実際のレースでは原監督から「抑えていくように」という指示を受けていたのに、体が動いていたからか、自分の判断でペースを上げていった。この走りがなければ、往路優勝はなかったかもしれません。
区間3位、1時間00分45秒。黒田選手が崩れる可能性がゼロではないなかで、4区で流れを安定させた意味は非常に大きかった。そしてこの走りは、今大会だけでなく、これまで箱根経験者のいなかった青学大の3年生世代にとっても大きな自信になった。
スターだけでなく、こうした「想定外を支えられる選手層」があったことこそ、青学が他校と一線を画した最大の理由だったのではないでしょうか。
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