"一般組"伊福陽太&"山の名探偵"工藤慎作がチームに活気を注入! 箱根駅伝トップスリー返り咲きへ早稲田大学が春から好調 (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi

【最年少"サブ10"を成し遂げた伊福】

初マラソンで早大記録を更新した伊福陽太初マラソンで早大記録を更新した伊福陽太この記事に関連する写真を見る

 早大が駅伝で結果を残すときには、指定校推薦や一般入試を経て入部した"一般組"の存在が欠かせない。その一般組からは伊福陽太(4年)が特筆すべき活躍を見せた。

「もともと長い距離が得意。大学生のうちにマラソンを走ってみようという話を花田さんからされていました。自分でも、トラックの5000mや1万mよりも向いていると思っていたので、やってみたいと思っていました」

 こう話す伊福は、2月11日に開催された延岡西日本マラソンで初マラソンに挑むと、東洋大のエース・梅崎蓮や実業団勢を破って、学生歴代6位(当時)となる2時間09分26秒の好記録で優勝を飾った。前年は先輩の佐藤航希(現・旭化成)が制しており、早大勢として連覇になった。また、21歳1カ月でのサブ10(2時間10分切り)は日本人史上最年少という快挙だった。

「30km以降もしっかり先頭集団で上位争いができる大会だと思ったので、出場しました」と言うように、記録よりも勝負に重点を置いていた。その言葉どおり、先頭集団でレースを進めていた伊福は、25kmでペースメーカーが外れると、思いきり勝負を仕掛けた。そして、そのまま逃げきって優勝を果たした。タイムはその副産物。伊福にとっても想定以上だった。

 ちなみに、このマラソンの記録は早大記録となる。

「いずれ更新されると思いますが、早稲田の歴史に自分の名前を残すことができてうれしいです」

 瀬古利彦、渡辺康幸、佐藤敦之らが在学中にマラソンに挑み、その後、オリンピアンとなったが、伊福はレジェンドたちの記録を一気に飛び越えたというわけだ。

 伊福は陸上競技の名門、京都の洛南高校出身。1学年上には東京五輪3000m障害7位の三浦龍司(SUBARU)、1学年後輩には現在の学生長距離界を代表する佐藤圭汰(駒澤大3年)がいる。「そういった強い選手との差は毎日意識させられた」と言い、結局高校3年間は駅伝のメンバーに選ばれることはなかったが、「いつかは彼らと同じ土俵で勝負したい」という思いを持ち続け、指定校推薦で早大に入学した。

 大学に入ると走る距離が伸び、タフさが持ち味の伊福は次第に頭角を現す。そして、2年目で箱根駅伝のメンバーをつかみとり、8区を走った(区間10位)。

 だが、3年目のシーズンは思わぬ辛酸をなめた。アンカーを任された昨年11月の全日本大学駅伝で脱水症状に陥るアクシデントに見舞われる。チームはシード権争いの真っ只中にあったが、結局10位に終わりシード権を逃した。

 そこから再起し、今年の箱根駅伝では8区5位と好走してチームのシード権獲得に貢献。そして、延岡でも快走を見せた。

 それでも、伊福の胸の内にある靄(もや)が晴れたわけではない。

「今年は、全日本は予選(関東地区の選考会/6月開催予定)からですが、去年自分が取りこぼしたので、しっかり走らないといけない。箱根もありますが、一番は全日本のアンカーを走りたい。去年のリベンジに向けてやっていきたいです」

 チームは箱根駅伝総合3位という目標を立てている。その前に、伊福は昨年悔しさを味わった舞台で雪辱を期している。

 4月6日の六大学対校ではオープン参加で5000mを走り14分18秒25とまずまずの走りを見せた。

「マラソンの疲労はそんなに感じなかったんですけど、試合になるとそんなに動かないなと感じていました。でも、それなりにはまとめられました」

 新シーズンは上々の滑り出し。5月の関東インカレはハーフマラソンに出場し、7月には将来を見据えてゴールドコースト(オーストラリア)で再びマラソンを走る予定だという。

「一般も推薦も関係ない。駅伝シーズンは、全部の駅伝でチーム目標を達成できるように、区間賞争いができる選手になりたいです」

 ロードでさらにタフさに磨きをかけ、駅伝シーズンも活躍を誓っている。

 一般組では伊福のほかにも、2年連続で箱根のアンカーを務めた菅野雄太も計算が立つ。また、宮岡凜太、草野洸正、和田悠都といった選手も虎視眈々と駅伝メンバーの座を狙い、力をつけてきた。駅伝で戦うために、少数精鋭の早稲田では、一般組も欠かすことができないピースなのだ。

【Profile】伊福陽太(いふく・ようた)/2002年12月23日生まれ、京都府出身。洛南高(京都)―早稲田大4年。箱根駅伝には過去2年、8区で出場し、それぞれ区間10位、5位の走りを見せたが、個人としては昨季の全日本大学駅伝のアンカー(8区)として脱水症状となり、区間19位になった悔しさを晴らすことを目標にしている。自己ベストは5000m14分07秒53、10000m 28分55秒78、ハーフマラソン1時間2分50秒、マラソン2時間09分26秒。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る