"一般組"伊福陽太&"山の名探偵"工藤慎作がチームに活気を注入! 箱根駅伝トップスリー返り咲きへ早稲田大学が春から好調 (3ページ目)
【"山の名探偵"工藤は2年目も順調に成長】
成長曲線を描き続ける2年目の工藤慎作この記事に関連する写真を見る 下級生では2年生の工藤慎作がひと皮剥けた成長を見せようとしている。
今年の箱根駅伝では、早大の課題だった5区・山上りで区間6位と好走。花田監督が命名した"山の名探偵" (メガネをかけて走る風貌が漫画『名探偵コナン』を連想させたのが理由)のニックネームがX(旧Twitter)のトレンドに上がるほど話題にもなった。だが、この活躍は長いトンネルから抜け出した先にあった。
工藤は早大に入学して早々に1万mで28分30秒台を連発し、関東インカレでは他校のエース格と渡り合って6位入賞を果たした。「"1年生にもかかわらず、こんな成績を残せた"と言われますが、それで満足していてはダメ。学年に関係なく、強い人たちにトライしていきたい」と頼もしいコメントも残している。
夏合宿も順調にこなし、駅伝シーズンは即戦力として活躍が期待された。しかし、その期待の大きさに反して工藤は不調に陥ってしまう。出雲は4区9位、全日本は4区13位と振るわず、前半戦の勢いが萎んでしまった。工藤自身も自信を失い、箱根に向けては「今年は間に合わないかも」と弱気な発言を漏らしていた。
しかしながら、箱根でも工藤に出番が回ってきた。箱根を前にエース格の石塚陽士(3年)の調子が上がらず、5区経験者の伊藤を平地の区間に起用したいというチーム事情があったからだ(結局、伊藤は直前のインフルエンザで欠場したが)。
工藤は高校時代、全国高校駅伝では上り基調の3区で、2年時が区間6位、3年時が区間5位と2年連続で好走しており、上りには得意意識があった。急ピッチではあったが、山上りの準備を始めたことが工藤にとって再起のきっかけになった。
工藤のポテンシャルはまだまだこんなものではないと思うが、秋の不調を思えば区間6位という結果は、上々の箱根デビューといえるだろう。
そして、3月の日本学生ハーフマラソン選手権では平地でもその能力を示した。
「2週間前ぐらいに、だいぶ疲労が溜まっていて欠場も考えていました。1週間ぐらい全然練習ができず、復帰の途上でのレースだったのでノープラン。着順もタイムも目標は設けていなくて、今回は最後の5kmをビルドアップして上げていくことを意識していました」
そんな言葉とは裏腹に、12km過ぎには自ら仕掛けて先頭に立つなど、積極的なレースを見せた。終盤は國學院大の青木瑠郁(2年)に独走を許したものの、工藤は1年生ながら3位に食い込む健闘を見せた。
「だいぶ自信になりました。箱根の山で注目してもらいましたが、山だけじゃない。こういうレースで力がちゃんとついているのを確認できました」
工藤はレースを振り返った。
自信を取り戻し、大学2年目のシーズンはいっそう高い目標に挑むのかと思いきや、工藤は意外な言葉を口にする。
「今年は、目標は立てずに気楽に行きたいです。目標を定めてしまうと、昨年の出雲や全日本みたいに空回りしてしまうこともあるので、その都度目標を選択していけたら。意外と考えないほうがうまくいくかもしれません」
自分なりに結果を出す方法を会得しつつあるのかもしれない。ちなみに、出雲と全日本ではサングラスをかけていたが、「サングラスだと成績が悪かったので」と、箱根以降のレースは普通のメガネに戻してレースに臨んでいる。
とはいえ、工藤は箱根の5区にはこだわりを持つ。
「(この1年は)上りに向けてやっていけたら」
気は早いが、来年の箱根駅伝では"山の名探偵"は、さらなる難題を解決してくれそうだ。
ルーキーでは、5000mで高校歴代5位(13分34秒59)を持つ山口竣平が、さっそく活躍を見せている。また、中距離を得意とする吉倉ナヤブ直希、立迫大徳は、東京六大学対校でそれぞれ1500m、800mを制した。ともに長距離ブロックに所属し箱根駅伝をも視野に入れている。
各学年に軸となる選手がおり、少人数ながら戦力が充実しつつある。春先の勢いが続けば、早大は今季の駅伝シーズンをかき回す存在になるかもしれない。
【Profile】工藤慎作(くどう・しんさく)/2004年11月10日生まれ、千葉県出身。八千代松陰高(千葉)―早稲田大2年。大学1年目の昨季は三大駅伝すべてに出場し、箱根駅伝では5区区間6位と好走し、往路順位を一つ上げる5位に貢献した。自己ベストは5000m 13分56秒60、10000m28分31秒87、ハーフマラソン1時間02分29秒。
著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。
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