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【第100回箱根駅伝・今昔の思い】法政大学・坪田智夫監督 かつて2区のエースは箱根に9年連続で導く名監督に (4ページ目)

  • 牧野 豊/取材・文・写真 Text by Makino Yutaka

――現在の法政大は、シーズン前半にはそれほど記録会や競技会に出ない傾向にありますが、そうした経験が基になっているのですか。

「8月はジョグの延長程度の負荷でやっています。他大学さんと合宿場所が一緒になったりすると、うちは大丈夫かな? と不安になるくらいです。ただ、やはりケガがありますから。それとピークを合わせる観点から見ると、あまり記録を狙うためにいろいろ出ていくわけではありません。もちろん選手の意向を聞いた上で判断しますが、ここ数年でようやく実業団時代にやってきたことも少しずつ反映できる段階に入ってきました。あと帝京大の中野(孝行)監督や麗澤大の山川(達也)監督などいろいろな工夫を凝らして強化に当たっている指導者の方に話を聞いたりしています。私自身、チームが継続して箱根駅伝に出れるようになり、シード争いにも絡めるようになってきたと思いますが、そこに固執しては成長がないという考えがあるからです」

――監督就任から今季で11年目になりますが、指導者として箱根駅伝で記憶に残るシーンはありますか。

「前回大会ですね。9区の地点で3位の背中が見えた光景は忘れられません。青学大の岸本君はあっという間に彼方へといってしまいましたが(笑)、4位グループは集団でした。1区以降は3位の背中が見えない展開でしたので、初めてのことだったんです。トラック種目(5000m、10000m)の自己ベストで見れば、うちは他チームに劣りますし、強豪チームに少しでもミスが出ることが前提になりますが、それでも1年間しっかり準備していけば、強豪校と比べて限られた環境にあるうちのチームでも勝負することができる。そのことは日頃から選手に言い聞かせてきたことですが、実際に上位争いできる可能性があることを証明できた上での総合7位だったと思います」

――東京五輪には3000m障害の青木涼真(現・Honda)、5000mの坂東悠太(現・富士通)の2選手が出場。長距離選手としては法大初のオリンピック代表になりました。

「大学時代は充実した環境ではなかったとも思いますが、本当に頑張ってくれました。彼らのように上を目指す選手もいますが、基本は、しっかりタスキをつないでいくことを中心に指導に当たっています。あと、選手に求めるものはやっぱり『やらされるのではなく、考えてやる』ということです。これは指導者になって以降、ずっと言ってきたことです。選手の方から練習を持ってきなさい、という意味です」

――最後に。昔も今も、変わらない箱根駅伝の魅力とは、どういう部分にあると感じていますか。

「一度離れてから戻ってみると、大きなコンテンツになったなとは感じますが、私のイメージで言うと、走っている選手の姿にすべてが出ているからではないでしょうか。選手一人ひとりがその日まで積み上げてきたものが応援する人たちの目にもはっきりと映し出されていると思いますし、200人以上の走者それぞれに違いがある。もちろんメディアに多く露出していることも大きな要因ですが、陸上競技も駅伝もめちゃくちゃシンプルな競技であることも、そうした個々に魅了されるのではないでしょうか」

●プロフィール
坪田智夫(つぼた・ともお)/1977年6月生まれ。兵庫県出身。神戸甲北高校(兵庫)。法大時代は4年間のうち3回箱根駅伝に出場し(2年時はチームが不出場)、3年時(1999年)、4年時(2000年)はエース区間の2区を任され、それぞれ区間3位、区間賞と存在感を示した。トラック10000mで強さを発揮し、実業団(コニカミノルタ)時代の2002年にはアジア競技大会10000m7位、2003年パリ世界選手権に出場。現役引退後の2010年に母校コーチを経て、2013年4月に監督に就任。以降、2015年の1回を除き、箱根駅伝に出場し、5回のシード権を獲得。指導方針は、精神面の強さを強調するスタイルである一方、学生たちの主体性を重視して指導に当たっている。今年は出雲駅伝9位、全日本大学駅伝への出場は逃したものの、9年連続出場となる箱根駅伝では3年連続のシード権獲得を狙う。

著者プロフィール

  • 牧野 豊

    牧野 豊 (まきの・ゆたか)

    1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。229月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

【写真】駒大スポーツ新聞「コマスポ」編集部・インタビューカット集

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